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「ねえ、翡翠…?」

こんなとき、ポケモンの言葉が解れば。
なんて、そんなに都合よくはないけれど。

翡翠は言っていいものか少し迷ったみたいだが、やがて、あのね、と切り出した。

「このメリープ…人間に捨てられたんだって」

今にも泣き出しそうな翡翠。哀しいんだね、すごく。
私も、すごく心が痛い。

「このメリープを捕まえたのは、小さな女の子だったんだって。でも、」

そこで一度言葉を切り、

「ぴりぴりして痛い子なんていらない、って。たったそれだけで、捨てられたんだって…」

ぽろぽろ。
翡翠の大きな瞳からひとつ、またひとつ。
涙が溢れてきて。

ごめんね。
ごめん、ね。

私が謝ったところで、君の心の傷は消えたりしないのにね。

私が近付いても逃げないっていうことは、多分、まだ信じたいんだ…信じてみたいんだ、人間のことを。
きみは、こんなに優しいのにね。

「ねぇ、」

私はメリープの目を見て言った。

「私たちと、一緒に来ない?」

人間が君に対してしたことの償いができるなんて思わないけれど。
少しでも、きみが信じてくれるならば。

伝わってくるのは戸惑い。
そうだよね、簡単には信じられないよね…

すると、黙っていた翡翠が口を開いた。

「あのね、カナエちゃん。メリープは、本当に私なんかが行っていいのかなって思ってるよ」

それって、

「一緒に来てもいいって…そう、思ってくれてるってこと?」

メェ、とまたメリープは一鳴きした。
弱々しいながらも、否定の色は感じられない。


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