3 「ねえ、翡翠…?」 こんなとき、ポケモンの言葉が解れば。 なんて、そんなに都合よくはないけれど。 翡翠は言っていいものか少し迷ったみたいだが、やがて、あのね、と切り出した。 「このメリープ…人間に捨てられたんだって」 今にも泣き出しそうな翡翠。哀しいんだね、すごく。 私も、すごく心が痛い。 「このメリープを捕まえたのは、小さな女の子だったんだって。でも、」 そこで一度言葉を切り、 「ぴりぴりして痛い子なんていらない、って。たったそれだけで、捨てられたんだって…」 ぽろぽろ。 翡翠の大きな瞳からひとつ、またひとつ。 涙が溢れてきて。 ごめんね。 ごめん、ね。 私が謝ったところで、君の心の傷は消えたりしないのにね。 私が近付いても逃げないっていうことは、多分、まだ信じたいんだ…信じてみたいんだ、人間のことを。 きみは、こんなに優しいのにね。 「ねぇ、」 私はメリープの目を見て言った。 「私たちと、一緒に来ない?」 人間が君に対してしたことの償いができるなんて思わないけれど。 少しでも、きみが信じてくれるならば。 伝わってくるのは戸惑い。 そうだよね、簡単には信じられないよね… すると、黙っていた翡翠が口を開いた。 「あのね、カナエちゃん。メリープは、本当に私なんかが行っていいのかなって思ってるよ」 それって、 「一緒に来てもいいって…そう、思ってくれてるってこと?」 メェ、とまたメリープは一鳴きした。 弱々しいながらも、否定の色は感じられない。 |