5 「ピジョン、戦闘不能!よって挑戦者、カナエの勝利!」 審判の声が響く。 私…ううん、私たち、勝ったんだ…! 「蒼衣、ありがとうー!」 ぎゅう、と蒼衣を抱きしめて頬擦りしたら、よじよじと身体を動かした。 「やったね、カナエちゃん!」 翡翠も一緒になって喜んでくれている。 そして、今はボールの中だけど風音もありがとうね。 「おめでとう、カナエさん」 ぱち、ぱち、と拍手をしながらハヤトさんがこちらに来る。 「ありがとうございます、ハヤトさん」 「これがキキョウジムのバッジ…ウイングバッジだよ」 はい、と私にバッジを手渡す。 きらりと光る小さなバッジ。 小さいけれど、ずしりと重い気がした。 「ありがとうございます!」 「こちらこそ、いい勝負ができて嬉しいよ。ありがとう」 ぎゅ、とハヤトさんと握手を交わす。 …そうだ。 「あの、ハヤトさん」 「どうしたんだい?」 昨日マダツボミの塔に行ったときはヒントらしいヒントは得られなかった。 ハヤトさんならキキョウのジムリーダーだし、何か知っているかもしれない、と、私が異世界から来たことは伏せつつ(うまく隠した自信はないが)塔に伝わる言い伝えなどないかと聞いてみた……が。 「マダツボミの塔か…残念ながら、俺はそんなに詳しくないな…父さんなら、もしかしたら何か知っているかもしれないんだけれど…あ、いや、」 何故かハヤトさんはそこで一度言葉を切り、 「いいよ、俺の方でも調べておこう。何かわかったら連絡するよ」 「ありがとうございます!」 そうして私はキキョウジムをあとにした。 目指す目標は高く大きくポケモンリーグ! …とは言ったけれど、いくら目標は高くと言っても物理的な高さはごめんだ。 キキョウジムを出て、心底そう思った。 |