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「や、やっと着いたねぇ」

あまり高さがないんじゃないかと思っていたマダツボミの塔は、確かに高さはないんだけれど(3階建てのようだ)、昇ったり降りたりその辺にわらわらとお坊さんが居たりで、なかなか前に進めないのだ。

柱の側に居たお坊さんに勝って、いざ長老…と、奥を見たとき。


赤い髪の…少年。


まさか、ここで出会うなんて。
どうする…?

彼は私に気付いていない。

「ふん…いくぞ、ヒノアラシ」

きゅ!と彼の連れたヒノアラシは彼のあとに続く。

「あ…まって!」

止めなければ、彼を。
咄嗟に叫んだけれど、彼は私の声に気付かずに…あれは、穴抜けの紐?

次の瞬間、彼の姿は消えていた。

「あ…っ」

止められ、なかった。
足元から動揺の気配が伝わってきた。
そっか、あのヒノアラシは翡翠と一緒に育ったヒノアラシだ…
昨日の朝まで、一緒だったのに。

「翡翠…絶対に、止めようね」

視界の端に、見慣れた光が映った。
見ると、やはりというか少年姿の翡翠が居て。

「カナエちゃん…僕、絶対止めるよ、アイツ」

それは、初めて見る、翡翠の怒り。
共に育った仲間が奪われたことに対して見せた、怒り。
少年が居なくなったその場所をただただ静かに、見つめていた。


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