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ピリリリリ、とポケギアの呼出し音で我に返った。
着信は、ウツギ博士。

「もしもし?」

「も、もしもし、カナエちゃん?!」

どうしたんだろう。ひどく慌てているようだけど。

「どうしたんですか、博士」

「大変なんだ。研究所から…ポケモンが、盗まれた」

博士の台詞で思い出した。
どこかで見たような気がした、昨日の赤いアイツ……金銀編の、ライバル。

「博士…もしかして、犯人って赤い髪の男の子、ですか?」

「ああ、そうみたいだ。お使いの帰りにヒビキ君がバトルを挑まれたらしくて、」

博士はそこで一度言葉を切り、

「…ともかく、カナエちゃん。もし、旅の途中で彼をまた見かけたら…彼を、止めて欲しい」

「わかりました」

正直、止められるかわからないけれど。
止めなくちゃ。

「じゃあ、カナエちゃん。また、何かあったら…」

「あ…博士、」

さっきの舞妓さんのことを聞こうかと思ったが、ウツギ博士と舞妓さんに接点もなさそうなので、どう説明したものかと迷う。
迷った末に、

「…いえ、やっぱりいいです」

「…そうかい?まあ、また何かあったらいつでも連絡してくれたらいいからね」

じゃあ、と言って電話は切られた。
手に持ったままのポケギアから、ツーツーと音が漏れる。

「大変なことになっちゃったねぇ…蒼衣」

蒼衣の頭を撫でながら呟くと、困ったように首を傾げた。



ともあれ、うじうじ悩んでなんていられない。
行こうか、と蒼衣を促して、ヨシノシティをあとにした。


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