3 ピリリリリ、とポケギアの呼出し音で我に返った。 着信は、ウツギ博士。 「もしもし?」 「も、もしもし、カナエちゃん?!」 どうしたんだろう。ひどく慌てているようだけど。 「どうしたんですか、博士」 「大変なんだ。研究所から…ポケモンが、盗まれた」 博士の台詞で思い出した。 どこかで見たような気がした、昨日の赤いアイツ……金銀編の、ライバル。 「博士…もしかして、犯人って赤い髪の男の子、ですか?」 「ああ、そうみたいだ。お使いの帰りにヒビキ君がバトルを挑まれたらしくて、」 博士はそこで一度言葉を切り、 「…ともかく、カナエちゃん。もし、旅の途中で彼をまた見かけたら…彼を、止めて欲しい」 「わかりました」 正直、止められるかわからないけれど。 止めなくちゃ。 「じゃあ、カナエちゃん。また、何かあったら…」 「あ…博士、」 さっきの舞妓さんのことを聞こうかと思ったが、ウツギ博士と舞妓さんに接点もなさそうなので、どう説明したものかと迷う。 迷った末に、 「…いえ、やっぱりいいです」 「…そうかい?まあ、また何かあったらいつでも連絡してくれたらいいからね」 じゃあ、と言って電話は切られた。 手に持ったままのポケギアから、ツーツーと音が漏れる。 「大変なことになっちゃったねぇ…蒼衣」 蒼衣の頭を撫でながら呟くと、困ったように首を傾げた。 ともあれ、うじうじ悩んでなんていられない。 行こうか、と蒼衣を促して、ヨシノシティをあとにした。 |