3 ぱちぱちと数回瞬きをして、風音は不思議そうに自分の身体を見つめる。 か… 「風音かわいい!!」 ぎゅう、と私は風音に抱き着く。 「え、あ、ちょっとカナエ?!」 わたわたと慌てる風音。 いけない、あまりに風音がかわいかったから、つい。 「ごめんごめん。風音があんまりにもかわいかったからさ」 「やだ、やめてよ照れるじゃないの。それはそうと、改めて助けてくれて、ありがとう」 「気にしないで、私が好きでやったことだしさ」 あははは、と笑って、皆で連れだって食堂へ向かった。 翡翠は原型だからポケモンフーズときのみで…蒼衣と風音、人間のご飯でいいのかな…? でも人の姿でポケモンフーズ食べてるのもおかしいし… 悩んだ末に、翡翠用にポケモンフーズときのみ、蒼衣と風音、それに私はオムライス。 運ぶのを蒼衣に手伝ってもらい(一応男の子だし)、風音には翡翠と一緒に席を取ってもらった。 注文を済ませ、カウンターの傍で待とうと脇に避けたとき。 どんっ 何かにぶつかった。 視線を移動させると、赤い髪のやたらと目付きの悪い少年。 歳はヒビキくんたちと同じくらいだろうか。 どこかで見たような気がしなくもないんだけどな… 「あ、すみません」 人にぶつかった、と認識したので謝ったところ、彼は「ふんっ」とこちらを一瞥し、去っていった。 なにあれ感じ悪い! 赤いアイツはカレーを注文していたようで、カウンターから受け取っている。 よし、アイツのことはカレーの王子様って呼んでやろう。 「腹立つよねぇ、蒼衣」 「よくわからない。けど、その呼び方はどうかと思う」 「蒼衣…あんた、割とズバッと言うわよね…」 そうこうしているうちに、「24番、オムライス3つにポケモンフーズときのみできたよ!」と、カウンター越しに呼ばれた。 ともすると、単純というか、私の中からあっさりと赤いアイツのことは消えていた。 それが、後に重大な事件と関わりがあるとは、このときの私は予想していなかった。 |