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「かがりぃー、徳利ってこれでいいの?」

ほこほこと温かそうなどてらを羽織って戻って来た風音が手に持つのは、小さな瓶のような陶器。

「んー、多分」

「多分ってなによ、貴女徳利も知らないのに頼んだの?」

呆れた、と垂はため息をつく。
そんな垂の反応に、炬は頬を膨らませた。

「これくれたおっさんがそう言うんやもん。ほんなら垂は知ってるんか?」

「そりゃあ……知らないけど、」

ずっと野生で育った上に、自分の主人は未成年。
アルコールなどとは縁遠かったから、知らなくて当然といえば当然ではあるが、垂にもささやか以上にプライドはある。
悔しそうに唇を噛んだ。
そんなやり取りを横に、備え付けの簡易キッチンからなぎが顔を出す。

「炬ちゃん、お湯沸いたみたいなんだけど…、」

「おー、おおきに。カザ、それ貸してんか」

ん、と風音がその徳利を渡せば、炬はなみなみとパックから透明な液体を注ぐ。

「…ねぇ、炬。それ、本当に飲み物なの?」

一見すると水にも見えるその液体は、水とは似ても似つかない独特の匂いを放っている。
かつて嗅いだことのない匂いに、垂を始めとする全員が顔をしかめた。

「…まあ、大丈夫やろ。んで、これをしばらくお湯につけて温めたら飲み頃やって」

果報は寝て待て、と、合ってるのかどうなのかよくわからないことわざを呟いて、炬はぐっと深く椅子に腰掛ける。

垂たちは不安げに湯煎されている瓶…徳利を見つめる。



――待つこと数分。
十分に温められたその液体は、先程よりも一段と強い香りを放っている。
そして……異変はこの頃から始まった。

「く…っ、くくくっ、」

部屋の中に噛み殺したような笑い声が響き、それは止むことがない。

「ちょっ…!炬?貴女どうしたのよ、急に笑い出して…」

「炬ちゃん…?」

「あかん…なんや知らんけど、楽しなってきたわ」

そして炬は湯煎された徳利に手を伸ばし……そこから、事態は急展開を迎える。


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