四月馬鹿


「カナエちゃん!」

ぱたぱた、と広場で遊んでいた翡翠が走って戻って来た。
風音と一緒に、広場に居た子供たちと遊んでいたはずだけれど…また風音にいじめられたのかな?
(ちなみに蒼衣は私の隣でひなたぼっこをして眠そうにしている)

そして、言った。

「四月って、馬鹿なの?!」

……

「はい?」

「あの子たちが言ってたよ、四月は馬鹿だからどんな嘘つこうか、って!皆で四月をいじめるの?」

でも四月は人でもポケモンでもないよう、と翡翠は頭を抱える。

ああ、言いたいことはわかった。わかったけど…

「翡翠」

「なぁに、カナエちゃん」

「あのね、四月馬鹿っていうのはエイプリルフールって言って…まあ、簡単に言うと、4月1日は嘘をついてもいい日だよ、っていうことだよ」

「…?じゃあ、今日は嘘ついてもいい日?」

笑って許せるくらいのね、と言うと、翡翠は再び頭を抱えて悩み出した。
そこへ、子供たちと別れて風音もこちらへ戻ってきた。

「ねえねえ、翡翠!」

「なに?風音」

「お昼から言おうと思ってたんだけどさぁ、あんた、口の周りケチャップだらけよ」

ぅええ?!と翡翠は慌てて手で口の周りを拭う。
そして、蒼衣(騒ぎですっかり起きたようだ)に「ねぇ、蒼衣!ケチャップ取れた?!」と聞いている。
蒼衣はきょとん、と翡翠を見つめたあと、言った。

「翡翠。今日、僕らはお昼、ポケモンフーズ」

一瞬の沈黙。

そう、3人が人型をとったのはお昼すぎ、広場に来る少し前のこと。

「あははは!やーい、翡翠、騙されたー!」

お腹を抱えてケラケラと大笑いする風音。
騙されたことにようやく気付いた翡翠が顔を真っ赤にしている。

「もう風音なんて知らない!嫌い!」

すると風音はニヤリと笑って言った。

「それってアタシのこと好きってこと?」

「違うもん、違うもん!」

「嫌よ嫌よも好きのうち、ってねー」

きゃいきゃいと騒ぎながら、風音と翡翠がじゃれている。
平和だなぁ、なんて日和見気分でそんな2人を眺めていた。
そんな、春のある日。




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