6 『ねぇ、カナエ。貴女、怖いとかは思わないの?』 不意に、垂はそう言った。 「怖いよ。今だって、すごく怖い」 ほら、と少し震える手を、垂に宛がう。 自分よりも大きなものに立ち向かうのには、どうしたって恐怖が少なからずついてくる。 「でもさ、あのギャラドスの方が…もっと怖いと思う。だって、自分の力を制御できないんだもん」 望まない、大きな力を突然与えられて、自分の力を抑えられなくて、持て余して。 「だからさ、怖いけど…私は大丈夫。垂や、みんながいるから」 すると、垂はきょとんとしたあと、クスクスと笑った。 『それもそうね。さ、もう着くわよ』 ざざぁ、と大きな波が起こった。 波は私たちを押し潰すように迫ってきたけれど、間一髪。 垂が避けてくれたおかげで転覆は免れた。 そして、波が過ぎたその先に居たのは、 「ギャラドス…!」 岸から見るより、ずっと大きい。 怖いな…。 やっぱりやめとけばよかったかな。 …ううん、それでも、あの悲しい声を聞いてしまったから…何とかしたいって、思ったから。 誰に任せるかは、もう既に決めている。 私は、ボールに手をかけた。 「なぎ!」 あまり長引くと、ギャラドスは多分、もっと苦しむから。 できるだけ早く、何とかしてあげたい。 だから、敢えて私はなぎに任せる。 なぎもその意図はわかってくれたようで、一度振り返ると、私を安心させるかのようにウィンクをひとつ、飛ばした。 『苦しい…いつもそうだ、人間は勝手な理由で私達の生活を侵す!いらない…こんな力は必要ない…!』 ギャラドスの叫びが響く。 「ギャラドス…これが正しいかはわからない。でも、貴女がそれを望むのならば、」 これが、考えた上で出した答えだから。 「なぎ……雷!!」 ばちばち、となぎの周りに電場が起こり、次の瞬間。 どおぉ…ん 湖に、轟音と共に一条の光が落ちた。 |