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『ねぇ、カナエ。貴女、怖いとかは思わないの?』

不意に、垂はそう言った。

「怖いよ。今だって、すごく怖い」

ほら、と少し震える手を、垂に宛がう。
自分よりも大きなものに立ち向かうのには、どうしたって恐怖が少なからずついてくる。

「でもさ、あのギャラドスの方が…もっと怖いと思う。だって、自分の力を制御できないんだもん」

望まない、大きな力を突然与えられて、自分の力を抑えられなくて、持て余して。

「だからさ、怖いけど…私は大丈夫。垂や、みんながいるから」

すると、垂はきょとんとしたあと、クスクスと笑った。

『それもそうね。さ、もう着くわよ』

ざざぁ、と大きな波が起こった。
波は私たちを押し潰すように迫ってきたけれど、間一髪。
垂が避けてくれたおかげで転覆は免れた。

そして、波が過ぎたその先に居たのは、

「ギャラドス…!」

岸から見るより、ずっと大きい。
怖いな…。
やっぱりやめとけばよかったかな。

…ううん、それでも、あの悲しい声を聞いてしまったから…何とかしたいって、思ったから。
誰に任せるかは、もう既に決めている。
私は、ボールに手をかけた。

「なぎ!」

あまり長引くと、ギャラドスは多分、もっと苦しむから。
できるだけ早く、何とかしてあげたい。
だから、敢えて私はなぎに任せる。

なぎもその意図はわかってくれたようで、一度振り返ると、私を安心させるかのようにウィンクをひとつ、飛ばした。



『苦しい…いつもそうだ、人間は勝手な理由で私達の生活を侵す!いらない…こんな力は必要ない…!』

ギャラドスの叫びが響く。

「ギャラドス…これが正しいかはわからない。でも、貴女がそれを望むのならば、」

これが、考えた上で出した答えだから。

「なぎ……雷!!」



ばちばち、となぎの周りに電場が起こり、次の瞬間。


どおぉ…ん


湖に、轟音と共に一条の光が落ちた。


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