5 「……垂、」 マント姿の彼が立ち去ったあと。 正直、どうしたらいいかなんてわからない…けど、 「垂。私を、あのギャラドスのとこまで連れていって欲しいの」 「カナエ、アンタ正気?!」 「そうよ、尻尾でちょっと弾かれただけでも吹っ飛ぶわよ?」 風音と垂が口々に叫ぶ。 他のみんなも、あまりいい顔はしていない。 けど、さ。 見てしまった、知ってしまった以上は、やっぱり放ってなんておけない。 例えそれが、人間のエゴだとしても。 「…ま、仕方ないわね」 きらきら、と垂を光が包み、その姿を原型のパウワウに変えた。 『私はさ、そんなカナエだから着いて行こうって思ったんだもの』 ほら、お乗りなさい。と、垂は背を向ける。 「ありがとう、垂!」 早速垂の背に捕まろうとする、と、 「カナエちゃん、待ってよ」 「そうよぅ。アンタ1人で、あのギャラドス相手に素手でやる気?」 「せや、カナエが行くんやったら、あたしらかて行くで」 「私たちだって、あのギャラドスを何とかしてあげたいのは一緒だもの」 そして、みんなその姿をそれぞれの元の姿に変える。 『カナエ、大丈夫。僕たちも一緒に行くから』 ぎゅ、と蒼衣はその小さな手で、私の手を握った。 その感覚に、なんだかとても安心する。 「ん…ありがとう、みんな!」 みんなを一度ボールに戻して、今度こそ私は垂に捕まった。 「垂、よろしく」 『安全運転は保証できないわよ』 「ヘーキ。最初だって、そうだったじゃない」 それもそうね、とクスリと笑って、垂は私を乗せて湖の中央を目指して進み出した。 |