4 私を殺して――― 確かに彼女はそう言った。 「カナエ!何ボサッとしてんねん!」 「だって炬、このギャラドス…、」 「改造された、ポケモン」 突然、私たちの誰のでもない、第三者の声が聞こえた。 ううん、それよりも… ざり、と土を踏む音が背後から聞こえた。 振り向くと、燃えるように赤い髪に、黒いマントを羽織ったお兄さん。 その目には、鋭い光が宿っている。 「改造って…改造って、どういう…」 「その言葉の通り。あのギャラドスは、ロケット団によって改造されたポケモンだよ。攻撃を強化され、その能力を誇示するかのように体の色も」 「そんな…!」 だとしたら、そんなのひど過ぎる。 望まない力、望まない容貌。 だから、だ。 絶望して、絶望して、絶望して、絶望して、あんなにも悲痛な声で訴えていたんだ。 「元に…元に戻す方法って、」 一縷の望みをかけて。 何者かもわからないけれど、突然現れたマントのお兄さんに私は尋ねた……けど、 「残念ながら、ああなってしまった以上…あのまま生きるか、もしくは倒すか。戻す道は、今のところ…ない」 そんな…!そう言おうとしたが、私はその言葉を飲み込んだ。 彼の横顔が、すごく悔しそうに歪んでいたから。 私だけじゃない。 この人も、悔しいんだ。 「…君、」 不意に、お兄さんが口を開いた。 「オレは一度、チョウジに戻ってこの件について調査をする…ここは、任せてもいいかな?」 「任せるって言われても…」 「大丈夫。君ならできるよ」 そう言ってお兄さんは一度私の肩を叩き、そして、 「カイリュー!チョウジまで、すぐに戻ってくれ!」 モンスターボールからカイリューを出し、その背中に飛び乗った。 カイリューは一度私を見て、そして、その翼を広げて空高く飛び上がった。 「あ、待っ…!」 引き留める間もなく。 あっという間に、カイリューの姿は見えなくなってしまった。 |