2 翌日。 お弁当まで用意して、遠足気分で私たちはいかりの湖へ向かっていた。 天気は正にピクニック日和で、意気揚々と湖に向かっていた、のだけれど。 「通行料?」 「そ。このいかりの湖への近道を通るには、通行料として1000円イタダキマス」 草むらを通る道と、舗装された道。 とりあえず舗装された道から行こうか、と、関所に入った途端に通行料として1000円を要求されたのだ。 通行料は別として、このオニーサンの、にやにやと人を見下したような馬鹿にしたような視線がなんだか気に入らない。 「じゃ、外から行こっか」 「あれ?外から行くんだ。へぇー」 にやにやと厭味っぽいオニーサンの声を背に、私たちはちょっと遠回りだけど外の回り道から湖へ向かうことにした。 「カナエちゃん、俺すっげーアイツ殴りたかったんだけど」 建物を出てすぐに、後ろを睨み付けるように翡翠が言った。 「あたしも。な、今からでも殴ってええか?」 「気持ちはわかるけど、とりあえずやめとこうか」 あんな人が当番のときに来たのは、多分、運が悪かったのだ。 「ま、あんなの気にしたらダメよぅ。ほら、別にあそこじゃないと行けないわけでもないでしょ」 くぁ、とあくびをひとつして、風音。 ま、それもそうだよね。 「それにしてもさ、赤いギャラドスってどんなのかしら。想像つかないわ」 「そう、それよ。アタシらでもたまにちょっと毛色の違ったのはいるけどさ。そこまで派手に違うのも、珍しいわよね」 赤いギャラドス。 何か…何か、忘れてることがある気がするんだけど。 昔のことだから記憶も朧げなんだけど、何か大事なことがあった気がする。 そうこうしながらのんびり歩いてると、開けた場所に出た。 陽光を受けて、きらきらと湖が光っている。 「わ…すごい綺麗」 深い青に染まる湖は透き通っていて、湖の中にコイキングがちらほらと見える。 「コイキングって、こうして見るとかわいいねぇ」 なんか、憎めない顔っていうかさ。 湖の辺で持ってきたお弁当を広げて、少し遅目のお昼にしようとしたとき。 おおおぉ……ん、 どこか悲痛な叫びが、辺りに響き渡った。 |