5


あれから私たちは舞台のある広間を下りて、楽屋……だろうか。
奥の部屋に通された。

私の右に蒼衣。
正面にタマオさん。
そして、以下右隣に舞妓さんが続いている。
マツバさんは、タマオさんの左側。

「あらためて、先程はすみませんでした。蒼衣はんも、お加減どないですか?」

タマオさんは深々と頭を下げた。
蒼衣はといえば、複雑そうな表情をしている。

「さて……時間もあまりありませんし、早速やけど本題に入りましょか。皆さんにも話聞いてもらった方がええですやろ?」

そう言ってタマオさんはちらりと私のボールをみた。
皆さん……は、翡翠たちのことだろう。
でも、

「あの、多分みんな……は、この部屋には入らないと思うんですけど、」

擬人化した姿ならともかく、原型では。
すると、タマオさんの口からは思いもしなかった言葉が出て来た。

「蒼衣はんも含めて、擬人化したらいけますやろ?」

「どうして、それを……?」

少なくとも、その瞬間を知っているのはウツギ博士やヒビキくんたちだけ……のはずなのに。

「それも含めて、お話します。さ、早よう」

どうやらタマオさんは時間を少し気にしているらしく、声色に少し焦りが見られた。

まだよく理解はできてない……けど、知っている以上は隠すこともないし、みんなには私も知って欲しい。

私は翡翠から順番にボールから出すと、擬人化するよう伝える。

みんな不思議そうな顔をしていたけど、
「大丈夫」
と言えばとりあえずはそれぞれ人の姿になった。

ずらりと並んだその様子は、なんというか……圧巻だった。
(何のメンバーかは、見ただけではよくわからないだろうけど)

タマオさんは居住まいを正して、さて、と切り出した。

「そしたら、始めましょか。カナエはん……それに皆さん、今からお話しますこと、信じがたいこともありますやろけど、とりあえずは一通り聞いてもらえますやろか?」

私……いや、私たちは無言で頷く。
それを確認して、タマオさんは話を始めた。


それは……想像していた以上に、予想外な内容だった。



私の知らない、私の物語。


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