4 「ほな、月代はん」 「蒼衣!」 同時に放り投げられたボール。 私のボールからはサーナイトの蒼衣。 そして、タマオさんのボールから出て来たのは。 「ブラッキー……、」 ああ、最悪だ。 こんなところまで、アポロさんのときと同じじゃなくてもいいのに。 タマオさんは優雅ににこりと笑った。 「ええですか、カナエはん。大切なのは、信じること」 信じること……? どういうことだろう? どうして、今更……、 「ほな、始めましょか」 タマオさんの深意が読めないまま……バトルは、始まった。 「蒼衣、瞑想!」 とにかく、できることをしなくちゃ。 蒼衣はスゥ、と目をつむると、精神を集中させる。 場の空気が、ぴんと張り詰めた。 「月代はん、"のろい"」 ず……、と張り詰めた空気が重くなった。 それはタマオさんのブラッキーに纏わり付く。 「蒼衣、マジカルリーフで先制して!」 "のろい"で素早さが低くなっているなら、とにかくできるだけ先にダメージを。 蒼衣の回りに小さな葉っぱが現れ、ひゅん、と風を切った。 ……しかし、 「月代さん、不意打ち」 タン、とブラッキーは床を蹴る。 蒼衣の生み出した葉っぱをするするとかわして、ブラッキーは疾る。 蒼衣を通り越して、私の方へ。 「え……?」 避ける? ううん、間に合わない。 だってもうすぐそばに……、 来たるべき衝撃に備えて、ぎゅっと目をつむった。 1秒、2秒…… でも、予想した衝撃はいつまで経っても訪れない。 ゆっくりと目を開くと、そこには。 「……蒼衣、」 『怪我はない?』 蒼衣が。 ブラッキーからの攻撃を、受け止めていた。 でも、蒼衣とは少し距離があったのに……、 『テレポートだよ。おかしいと思って、それで……』 それで、私のところまで来たっていうの? 圧倒的に苦手な、悪タイプの物理技を受けたの……? 『言ったでしょ。カナエを守るって』 表情のわかりにくい蒼衣だけど、薄く笑った気がした。 すると、ぱちぱちとタマオさんが小さく拍手をしてこちらに歩み寄ってきた。 「タマオさん!これは、」 「おめでとうございます、カナエはん……いえ、虹の姫君」 どういうこと、という私の問いは、タマオさんの言葉によって遮られた。 「申し訳ありません、せやけどカナエはんと蒼衣はんの絆を試すことこそ、真の目的……勝敗自体は、関係ありませんのです」 『お怪我はありませんか?』 そう言って、ブラッキー……月代さんは、歩み寄ってきた。 何がなんだか、まだよくわからないけど……とりあえず、私は頷くしかできなかった。 |