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「よう来はりました、カナエはん」

「どうも、ご無沙汰してます……ええと、タマオさん」

この間会ったサクラさんやコモモさんより大分と大人びて見えたからタマオさんかコウメさんかな、とアタリをつけたんだけどどうやら正解だったようだ。
にこりと彼女……タマオさんは、微笑んだ。

私たちがエンジュに着いたのは、電話で言った通りの4時前。
歌舞練場の前に降り立つと、そこには舞妓さん……タマオさんが既に立っていた。

「まあ、立ち話もなんですので中へお入りよし」

タマオさんに促されるまま、歌舞練場に足を踏み入れる。
久しぶりに入るそこは、なんだか懐かしい気がした。

するすると板張りの客席を抜けて、辿り着いたのは檜舞台。
そこには、

「まあ、よう来はりました」

「ほんに、お変わりないようで」

「心配しましたんえ、どないかしはったんやろかって」

「やから大丈夫やて言いましたやろ。サクラ姉さんは心配性やね」

口々に私を出迎えたのは、行く先々で出会った舞妓さんたち。
(やっぱり並ぶと微妙な年齢の差はあるけど、よく見ないとわからない)

……そして、

「やあ、久しぶりだね」

にこりと柔和な笑みを浮かべて佇んでいたのは、この街のジムリーダー……すなわち、マツバさん。

「どうも、お久しぶりです」

久しぶりに会ったせいか、以前感じた苦手意識はどこかへ行ってしまったようだ。
エンジュジムで感じた緊張感は少しもない。

挨拶や他愛ない話をしていると、コホンとタマオさんが小さく咳ばらいをした。

「ほな、揃うたみたいですし……始めましょか」

そして袂に手を入れ、取り出したのはひとつのモンスターボール。

「えっと……、始めるって?」

「決まってますやろ、あんさんが全てを知るのに相応しいか……確かめさせてもらいます。マツバはんは、その見届け人」

そういうこと、とマツバさんは頷いた。
なんでマツバさんがいるんだろって思ったら、なるほど。

タマオさんの説明を要約すると、私とタマオさんで一対一のバトルをして、それで認められたら……いよいよ、全てを話してもらえるようだ。

タマオさんの手持ちが何なのか、私は知らない。


コガネでアポロさんと戦ったときを……少し、思い出した。


「ほな、いきましょか」

「お手柔らかに、お願いします」

まっすぐ正面を見据えると、にこりとタマオさんが笑った。


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