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幸いにもそこは丁度木陰になっているところに怪我をしたというポッポはいた。
羽根の近くだろうか。
近寄っても羽ばたく気配がない。

「カナエ、ポッポすごく痛い…」

蒼衣が何とも言えない表情をする。まるで、自分が痛いかのように。
ああ、この子は本当に人の、ポケモンの感情がよく分かるんだ。

「そうだね、蒼衣。でも大丈夫。治してあげるからね」

よしよしと蒼衣の頭を撫でて、私はうずくまるポッポの元へ近づいた。
そのやりとりの様子を、動けないながらもじっと見ていたポッポは近づく私を小さく威嚇する。

「大丈夫。君を傷つけたいんじゃないんだよ。治すだけだから」

カバンの中から、さっき博士からもらったばかりの傷薬を取り出す。

「痛っ!」

傷口に吹きかけようと手を伸ばすと、嘴で手の甲をつつかれる。
小さく血が滲む。

「カナエ!」

「カナエちゃん!」

「大丈夫だよ、蒼衣、翡翠。ポッポはちょっと怖いだけだから」

怖くないよ。
そう呟きながら、私はポッポと目を合わせる。
大丈夫だ、もう威嚇していない。
私はなるべく痛くしないよう、そっと傷薬をかけてやる。
すると不思議なことに、完治という程ではないにしろ傷が癒えていく。

「よかったね、もう大丈夫だよ」

先程までうずくまり全く動かなかったポッポが、ちょんちょんとその場で小さく飛び跳ねる。

「もう怪我すんなよー」

後ろでその様子を見ていたヒビキくんが、ポッポに向かって言う。

「よし、行こうヒビキくん!待たせちゃってごめんね!」

「なんでカナエさんが謝るのさ。いいことしたんだからいいじゃん!」

あははは、と私とヒビキくんはどちらからともなく笑いあった。
それに釣られて翡翠も笑い、何だか蒼衣も楽しそうにした。


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