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「おねぇちゃん、おやすみなさい!」

「うん、おやすみ」

ウツギ博士の子供さんがぱたぱたと走って部屋に帰っていく。
私は出された食後のお茶をすすり、ほっと一息ついた。

「カナエちゃん、隣の部屋にお布団用意してるから自由に使ってね」

食器を片付けながら、ウツギ博士の奥さん(博士に似て優しそうな人だ)が言った。

「ありがとうございます」

お言葉に甘えて、私は案内された部屋に向かう。
普段は資料を置いてる部屋らしく、大きめの本棚がいくつか並んでいる。
本棚の側に荷物を置いて、ボールだけ取り出してポケットへ。
洗いものをしていた奥さんに一言声をかけて、少し夜風に当たりたくて外に出た。

やっぱり初冬の夜風は冷たくて、何か羽織るものを持ってくればよかったかなぁと少し後悔したけど、出て来てしまったものは仕方ない。

ボールから順番にみんなを呼び出す。
炬がそっと私に寄り添うと、その温かさにほっとする。

「ありがと、かがり」

『ん、かまわんよ。そない格好やと寒いやろ』

「うん、ちょっとね」

あほぅ、と返ってきた。
返す言葉がない。

私と炬を基点に、左回りに蒼衣、垂、なぎ、風音、翡翠と円を描く。

「……あのさ、みんな」

ずっと、ききたかったことがあった。
それをきくのが怖かった。
みんながどう思っているのか、知りたくて知りたくなくて。

でも、いつまでも先延ばしにはしちゃいられない。


「あの……さ、みんな。もしも、だよ。私がいなくなったら……どうする?」

「…っ!」

息を飲む音が響き、みんなの表情が強張る。
最近、思うんだ。
エンジュで全てを知ったら、私は……ここにいられないんじゃないか、って。

すごく不安になる。
そしたら、みんなはどうするんだろう……って。

『……カナエは元々向こうの人間。だから、もし本当にカナエが心から帰ることを望むなら、僕らは止めない…止められない。でも、』

蒼衣は一度そこで言葉を切り…そして、絞り出すように続けた。

『本当のことを言うなら、離れたく、ない』

こんな蒼衣を見るのは初めてで、どう答えたらいいかわからない。

しばしの沈黙が、辺りを包んだ。


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