5 その他にも、それらの記事に記された内容は多少の違いはあるものの、身に覚えのあるものがほとんどだった。 例えば、ヒワダタウンでのヤドンの事件。 例えば、アサギシティの灯台が消えてしまったこと。 例えば、ロケット団が壊滅寸前まで追い込まれたこと。 これらの事件は、実際に10年前にこのジョウト地方で起こったことだという。 そしてそれらの事件に共通しているのは、解決の陰に一人の少女の姿があったらしい、ということだった。 彼女の名は、集められたどの記事にも載ってはいなかった。 偶然か……あるいは、 「どうだい?」 一通り読み終わった頃合いを見計らって、ウツギ博士は口を開いた。 何も……何を言っていいのか、わからなかった。 細かいものからそこそこのレベルでの差異は、確かにある。 でも大筋だけなぞれば、私が経験してきたものとがっちり符合するのだ。 「これ……、本当に10年前にここで起こったこと…なんですか?」 偶然というには、あまりにも合致しすぎる。 私の質問に、しかしウツギ博士はゆっくりと首を横に振った。 「それがね、残念ながら僕がこのジョウトに研究所を構えたのは、ここ数年の話なんだ。だから、10年前の話は詳しくは知らないんだよ」 申し訳なさそうに、眉を少し下げる。 「そうですか…、」 何かを知っているのなら、博士から直接話を聞きたかった。 でも、残念ながらそれは叶わないようだ。 「……カナエちゃん、逆に僕からもいいかい?君は"何"を知っていて、"誰"を探しているんだい?」 「それは……、」 私は迷った。 話せないことではないし、むしろ博士にはこんなにも協力してもらっているのだから、話さなくちゃいけないんだと思う。 ……でも、どう説明すればいいんだろう。 "私のお母さんがここにいるかもしれないけれど、その年齢が合致しない" だなんて。 「あの…私自身、どういうことかわからないので、どう説明したらいいかわからないんです」 「いいよ、聞こう」 ウツギ博士はどこまでも優しい。 その言葉に安心を覚えて、私は"お母さん"のことを話し始めた。 |