4 「さて……そろそろ本題に入ろうか」 あれから少し、今までの旅や他愛のない話をしていた。 長いような短いような旅だけど、やっぱりここまでを振り返るとあっという間だった気がする。 ヒビキくんがいれてくれたお茶(少し薄い気がする)を一口飲んで、博士は大きく息をついた。 (そのヒビキくんは、気を利かせたのかお茶を置くなり「コトネのとこ行ってくる!」と部屋を出ていった) 博士の言葉に、私はぐっと背筋を正す。 博士は小さく頷いて、そして口を開いた。 「そうだな、どこから話そうか……まず、君から預かった飴なんだけど、結論から言えばあれはただの飴だ」 「ただの……、」 「うん、成分にも特に変わったところはみられなかったよ」 じゃあ、あの変化はどういうことなんだろう? あの飴を口にした途端、人の姿になるなんて。 そんな私の考えを察したのか、ウツギ博士は話を続ける。 「そこで立てた仮説なんだけど……あの変化は飴が原因ではなく、君が異世界から持って来たものを口にする…というのが重要なんじゃないかと思うんだ」 「私が、向こうの世界から…、」 ウツギ博士は頷き、「まあ、もっとも…君以外の人間がもし同じようにこの世界に来たとして、ポケモンに影響を与えるかはわからないけどね」と、付け加えた。 「そうですか…。あの、やっぱり私みたいにここへ来た人って他にはいないんでしょうか?」 可能性はあるはずなんだ。 だって、行く先々であんなにも手掛かりがあったんだもの。 すると、博士は新聞の切り抜きを数枚、私の前に差し出した。 「これをご覧。今の質問の答えになるかはわからないが、少なくとも興味はあるはずだよ」 とりあえず一番上の一枚を読むと、背筋がざっと冷たくなるのがわかった。 その記事の見出しは、こう書いてあった。 "いかりの湖に異変?真っ赤なギャラドス現る" その記事の日付は、10年前のものだった。 |