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「さて……そろそろ本題に入ろうか」

あれから少し、今までの旅や他愛のない話をしていた。
長いような短いような旅だけど、やっぱりここまでを振り返るとあっという間だった気がする。

ヒビキくんがいれてくれたお茶(少し薄い気がする)を一口飲んで、博士は大きく息をついた。
(そのヒビキくんは、気を利かせたのかお茶を置くなり「コトネのとこ行ってくる!」と部屋を出ていった)

博士の言葉に、私はぐっと背筋を正す。
博士は小さく頷いて、そして口を開いた。

「そうだな、どこから話そうか……まず、君から預かった飴なんだけど、結論から言えばあれはただの飴だ」

「ただの……、」

「うん、成分にも特に変わったところはみられなかったよ」

じゃあ、あの変化はどういうことなんだろう?
あの飴を口にした途端、人の姿になるなんて。

そんな私の考えを察したのか、ウツギ博士は話を続ける。

「そこで立てた仮説なんだけど……あの変化は飴が原因ではなく、君が異世界から持って来たものを口にする…というのが重要なんじゃないかと思うんだ」

「私が、向こうの世界から…、」

ウツギ博士は頷き、「まあ、もっとも…君以外の人間がもし同じようにこの世界に来たとして、ポケモンに影響を与えるかはわからないけどね」と、付け加えた。

「そうですか…。あの、やっぱり私みたいにここへ来た人って他にはいないんでしょうか?」

可能性はあるはずなんだ。
だって、行く先々であんなにも手掛かりがあったんだもの。

すると、博士は新聞の切り抜きを数枚、私の前に差し出した。

「これをご覧。今の質問の答えになるかはわからないが、少なくとも興味はあるはずだよ」

とりあえず一番上の一枚を読むと、背筋がざっと冷たくなるのがわかった。

その記事の見出しは、こう書いてあった。

"いかりの湖に異変?真っ赤なギャラドス現る"




その記事の日付は、10年前のものだった。


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