3 ウツギ研究所…なんだかんだで、入るのはまだ2回目だ。 でもそんなに複雑な構造ではなかったので、勝手知ったるなんとやら。 ウツギ博士がいるであろう、研究所の奥へと進む。 すると、案の定。 ウツギ博士はこちらに背を向けて、何か書き物をしていた。 私がいることには、まだ気付いていないようだ。 声、かけても大丈夫かな? 一歩博士のいる方へ踏み出した、そのとき。 「あっれ、カナエさんじゃん!」 え、と私とウツギ博士は同時にその声の方向を向く。 そこに居たのは、 「あ、ヒビキくん」 「あー……、びっくりしたよ。カナエちゃん、来たなら声かけてよ」 よっぽどびっくりしたんだろう、ウツギ博士は取り落としたペンを拾い、ヒビキくんと私を交互に見比べた。 「すみません、何か作業してたみたいだったんで…、」 「いや、いいよ。先にカナエちゃんの用を済ませよう。ヒビキ君、悪いけどお茶を入れてきてくれるかい?」 今日はどうやらコトネちゃんはいないらしい。 博士の言葉にヒビキくんは「はいはーい」と間延びした返事で答え、部屋から出ていく。 「さて…ああ、カナエちゃん。その辺適当に座るといいよ」 博士が作業をしていたのとは違うテーブルもそれなりに資料に埋もれている。 山が崩れないように端に寄せて椅子に腰掛けると、博士もその向かいに座る。 「どうだい、ジョウトを一周してみて」 ゆったりとテーブルの上で指を組んで、ウツギ博士は言った。 そっか…改めて言われると、そういえばジョウト地方を一周したんだ。 なんだか今更実感が湧いてくる。 「すごく…すごく、楽しかったです。向こうじゃ経験できないこともたくさんあったし、それに…大切な仲間がたくさん、できたんです」 「そっか。あのときはラルトスの蒼衣君と、チコリータの翡翠君だったね。今は、どんな仲間がいるんだい?」 研究所を出てすぐに出会った、傷付いたポッポの風音。 人間に捨てられ、それでも尚人間を愛したメリープのなぎ。 幼なじみを捜すために仲間に加わった、ガーディの炬。 自然を愛する真っ白な心をもった、パウワウの垂。 みんなとの出会いは、今でも鮮明に思い出すことができる。 ウツギ博士はそんな私の話をにこにこしながら聞いていた。 「そうか、いい仲間に出会えたんだね」 「はい、みんな…私の、自慢の仲間なんです」 ボールをそっと撫でると、それに応えるようにカタリと揺れた。 |