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ウツギ研究所…なんだかんだで、入るのはまだ2回目だ。
でもそんなに複雑な構造ではなかったので、勝手知ったるなんとやら。
ウツギ博士がいるであろう、研究所の奥へと進む。

すると、案の定。
ウツギ博士はこちらに背を向けて、何か書き物をしていた。
私がいることには、まだ気付いていないようだ。
声、かけても大丈夫かな?

一歩博士のいる方へ踏み出した、そのとき。

「あっれ、カナエさんじゃん!」

え、と私とウツギ博士は同時にその声の方向を向く。
そこに居たのは、

「あ、ヒビキくん」

「あー……、びっくりしたよ。カナエちゃん、来たなら声かけてよ」

よっぽどびっくりしたんだろう、ウツギ博士は取り落としたペンを拾い、ヒビキくんと私を交互に見比べた。

「すみません、何か作業してたみたいだったんで…、」

「いや、いいよ。先にカナエちゃんの用を済ませよう。ヒビキ君、悪いけどお茶を入れてきてくれるかい?」

今日はどうやらコトネちゃんはいないらしい。
博士の言葉にヒビキくんは「はいはーい」と間延びした返事で答え、部屋から出ていく。

「さて…ああ、カナエちゃん。その辺適当に座るといいよ」

博士が作業をしていたのとは違うテーブルもそれなりに資料に埋もれている。
山が崩れないように端に寄せて椅子に腰掛けると、博士もその向かいに座る。

「どうだい、ジョウトを一周してみて」

ゆったりとテーブルの上で指を組んで、ウツギ博士は言った。
そっか…改めて言われると、そういえばジョウト地方を一周したんだ。
なんだか今更実感が湧いてくる。

「すごく…すごく、楽しかったです。向こうじゃ経験できないこともたくさんあったし、それに…大切な仲間がたくさん、できたんです」

「そっか。あのときはラルトスの蒼衣君と、チコリータの翡翠君だったね。今は、どんな仲間がいるんだい?」

研究所を出てすぐに出会った、傷付いたポッポの風音。
人間に捨てられ、それでも尚人間を愛したメリープのなぎ。
幼なじみを捜すために仲間に加わった、ガーディの炬。
自然を愛する真っ白な心をもった、パウワウの垂。

みんなとの出会いは、今でも鮮明に思い出すことができる。

ウツギ博士はそんな私の話をにこにこしながら聞いていた。

「そうか、いい仲間に出会えたんだね」

「はい、みんな…私の、自慢の仲間なんです」

ボールをそっと撫でると、それに応えるようにカタリと揺れた。


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