2 「あ、ウツギ博士……ええ、カナエです。今フスベを出たんで、もうすぐワカバに……あ、」 『どうしたのよぅ、カナエ?』 ジムを出てすぐに風音の背中に乗って、45番道路の上空を通って私たちはワカバタウンを目指していた。 いい天気だけど、やっぱり風が当たると少し寒い。 今から研究所へ行くとウツギ博士に連絡をしていた…ところなんだけど。 視界の端に、一瞬…きらりと光るものが横切った。 私は……あの色を知っている。 けれど、それをどこで見たのかはすぐに思い出すことができなくて。 「あ…いえ、なんでもないです。とりあえず、夕方には着くと思います」 ぴ、とポケギアを切る音が風を切る音に紛れる。 『……で、どーしたって?』 電話が終わったのを見計らって、風音は口を開く。 ……一瞬しか見えなかったけど、多分間違いない。 「なんかね、あっちの…暗闇の洞窟の方に、光るものが飛んでる気がしたんだけど…、」 『そぉ?アタシ気付かなかったけど…見間違いとかじゃなくて?』 改めてそう聞かれると少し自信がなくなる……けど、多分間違いない。 あれはどこで見たんだっけ…… 「あ、」 『なに、どうしたのよぅ?』 「ううん…前に、さっき見た光をどこかで見た気がしたんだけど……思い出した」 あれは……私がここに来てすぐの頃。 ワカバを出てヨシノに向かっている途中……大空を横切った光。 『ふ…ぅん?でもアタシも長いこと鳥ポケモンやってるけど、光るポケモンなんて聞いたことないわよさ』 「うん…」 でも、多分あの色は間違いない。 ……それに、一瞬しか見えなかったけど。 その上に、誰かが乗っていた気がする。 『……ま、なんにせよもうすぐワカバに着くわよぅ。しっかり捕まってなさいな』 そして風音はぐんと少しスピードを上げる。 下を少し見てみれば、見覚えのある景色。 「風音、覚えてる?あの辺で風音と会ったんだよね」 ワカバからヨシノへと続く道路で出会った、傷付いたポッポ。 でも、今はこんなにも素敵なピジョットに進化した。 『もち、覚えてるわよぅ。どうしたのよさ、急に改まってさ』 「んー、なんでもないよ」 『変なカナエ。さ、もうそろそろ降りるわよぅ』 そして風音はスピードをゆるやかに落とし、徐々に高度を下げていった。 見覚えのあるワカバの街が、視界に広がった。 |