8 「さて、カナエちゃん。どうするかい?」 このままジムに行くか…それとも今日は、 「すみません…ちょっと考えが纏まらなくて。明日…お願いしてもいいですか?」 ワタルさんも忙しいだろう人なのに、「いいとも」と、二つ返事で了承してくれた。 本当に、優しい人だと思う。 じゃあまた明日、昼頃にジムにおいでと言い置いて、ワタルさんはジムの中へ入って行った。 ポケモンセンターに戻る気にもなれなくて、ふらりと歩いているうちに、町外れの小川のほとりまでやってきた。 何となく一人にはなりたくなくてみんなをボールから出すと、渚楽以外はすぐに人型をとり、それぞれに複雑そうな顔をしていた。 『……ねえ、カナエちゃん』 珍しく、なぎが一番に口を開いた。 『カナエちゃんは…何をそんなに悩んでるのかしら?』 なぎの言葉に、ゆるりと顔を上げる。 「なぎ…?」 『私たちは、カナエちゃんにとってどういう存在かしら?』 え…? 思いもよらなかったそのセリフに、目頭が熱くなるのを感じる。 しかし、それはなぎも同じだということはすぐにわかった。 だって、 『カナエちゃん……いつも、自分で考え…、こむからっ、あ…あんまり、相談、してくれない…っら、』 なぎの声もまた、震えていたから。 「なぎ…」 「…ハイハイ、なぎもそれくらいにしてあげなよ。カナエだって…辛いんだよ」 風音がよしよしとなぎの頭を撫でてやる。 少し静電気に痺れるのか、僅かに顔をしかめた。 他のみんなの顔を見てみると、多少なりとも何か言いたそうな視線を向けられる。 「…確かに、カナエが話しにくいことを抱えていることはわかっているよ。ただ…やっぱり、僕らを少しでも頼って欲しいんだよ」 「うん…ごめん、みんな。あと…ありがとう」 思えば小さい頃から一人だったせいか、頼るというのが昔から苦手だったのかもしれない。 でも今は、こんなに頼もしい仲間が居る。 「じゃあさ…みんな、聞いてくれる?さっき私が、竜の穴で聞いてきたことを」 にっこり笑って、なぎは頷いた。 『ええ、もちろん』 他のみんなも、それに続いた。 |