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「さて、カナエちゃん。どうするかい?」

このままジムに行くか…それとも今日は、

「すみません…ちょっと考えが纏まらなくて。明日…お願いしてもいいですか?」

ワタルさんも忙しいだろう人なのに、「いいとも」と、二つ返事で了承してくれた。
本当に、優しい人だと思う。

じゃあまた明日、昼頃にジムにおいでと言い置いて、ワタルさんはジムの中へ入って行った。

ポケモンセンターに戻る気にもなれなくて、ふらりと歩いているうちに、町外れの小川のほとりまでやってきた。

何となく一人にはなりたくなくてみんなをボールから出すと、渚楽以外はすぐに人型をとり、それぞれに複雑そうな顔をしていた。

『……ねえ、カナエちゃん』

珍しく、なぎが一番に口を開いた。

『カナエちゃんは…何をそんなに悩んでるのかしら?』

なぎの言葉に、ゆるりと顔を上げる。

「なぎ…?」

『私たちは、カナエちゃんにとってどういう存在かしら?』

え…?
思いもよらなかったそのセリフに、目頭が熱くなるのを感じる。

しかし、それはなぎも同じだということはすぐにわかった。
だって、

『カナエちゃん……いつも、自分で考え…、こむからっ、あ…あんまり、相談、してくれない…っら、』

なぎの声もまた、震えていたから。

「なぎ…」

「…ハイハイ、なぎもそれくらいにしてあげなよ。カナエだって…辛いんだよ」

風音がよしよしとなぎの頭を撫でてやる。
少し静電気に痺れるのか、僅かに顔をしかめた。
他のみんなの顔を見てみると、多少なりとも何か言いたそうな視線を向けられる。

「…確かに、カナエが話しにくいことを抱えていることはわかっているよ。ただ…やっぱり、僕らを少しでも頼って欲しいんだよ」

「うん…ごめん、みんな。あと…ありがとう」

思えば小さい頃から一人だったせいか、頼るというのが昔から苦手だったのかもしれない。
でも今は、こんなに頼もしい仲間が居る。

「じゃあさ…みんな、聞いてくれる?さっき私が、竜の穴で聞いてきたことを」

にっこり笑って、なぎは頷いた。

『ええ、もちろん』


他のみんなも、それに続いた。


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