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「風音、フェザーダンスでハクリューの動きを封じて!」

『りょーかい!』

ハクリューを傷付けたくはない。
だから、なるべく相手の動きを封じなきゃ。

風音が一度大きく羽ばたくと、ふわふわと白いものが降り注ぐ。
それは身体が濡れたハクリューに纏わり付き、彼の自由を奪う。

『く…!』

ハクリューは一度水中に潜ると、身震いをひとつ。
纏わり付いた羽根から解放されたハクリューは動きに精彩を取り戻し、そして。

『きゃあっ?!』

「風音!」

目にも留まらぬ速さで水中から飛び出し、風音に突進をかける。
思わぬ攻撃に風音は避け切れず、大きくよろめいた。
ざば、とハクリューが水中に戻り、小さな水柱が立つ。
ゆらゆら揺れる水面のその向こうで、ハクリューはまだ目を光らせている。

どうしよう…水中にいるうちは、迂闊に手が出せない。
途方に暮れた、そのときだった。


「何の騒ぎだ?!」

私でも風音でも、もちろんハクリューでもない声が響き渡った。

その声は、祠の方から聞こえてきた。
ゆっくりとそちらに視線を移すと、そこに居たのは、

「わ…ワタルさん!」

『若!!』

私とハクリューが声を上げたのは、まったくの同時だった。
(もちろん、ワタルさんには私の声しか聞こえないんだろうけど)

「え…カナエちゃん?!」

心底驚いた、という風にワタルさんは目を見開く。
しかし思いもよらない再会に驚いたのは私も同じで、多分同じように目を見開いているんだろう。

ワタルさんはしばらく私とハクリューを交互に見比べていたが、やがて納得したようにひとつ頷いた。

「ハクリュー、その人は敵じゃない。下がってもいいぞ」

その言葉にハクリューは数回瞬きをし、頭を垂れた。

『…若のお知り合いとは知らず、失礼をいたしました』

そしてぱちゃ、という水音を残して、水中へ姿を消す。
突然のことに、ハクリューが消えた一点を呆然と見つめる。
っていうか、ミニリュウやハクリューが言ってた"若"ってワタルさんだったんだ…

「大丈夫かい、カナエちゃん」

「あ…はい、」

「すまないね、あのハクリューはこの祠を守ってくれているんだよ。とりあえず、こっちに来るかい」

私は頷き、しずり、と呼ぶと、

『貴女って意外に顔が広いのね』

と、返ってきた。


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テーマ「人外ファンタジー」
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