5 「風音、フェザーダンスでハクリューの動きを封じて!」 『りょーかい!』 ハクリューを傷付けたくはない。 だから、なるべく相手の動きを封じなきゃ。 風音が一度大きく羽ばたくと、ふわふわと白いものが降り注ぐ。 それは身体が濡れたハクリューに纏わり付き、彼の自由を奪う。 『く…!』 ハクリューは一度水中に潜ると、身震いをひとつ。 纏わり付いた羽根から解放されたハクリューは動きに精彩を取り戻し、そして。 『きゃあっ?!』 「風音!」 目にも留まらぬ速さで水中から飛び出し、風音に突進をかける。 思わぬ攻撃に風音は避け切れず、大きくよろめいた。 ざば、とハクリューが水中に戻り、小さな水柱が立つ。 ゆらゆら揺れる水面のその向こうで、ハクリューはまだ目を光らせている。 どうしよう…水中にいるうちは、迂闊に手が出せない。 途方に暮れた、そのときだった。 「何の騒ぎだ?!」 私でも風音でも、もちろんハクリューでもない声が響き渡った。 その声は、祠の方から聞こえてきた。 ゆっくりとそちらに視線を移すと、そこに居たのは、 「わ…ワタルさん!」 『若!!』 私とハクリューが声を上げたのは、まったくの同時だった。 (もちろん、ワタルさんには私の声しか聞こえないんだろうけど) 「え…カナエちゃん?!」 心底驚いた、という風にワタルさんは目を見開く。 しかし思いもよらない再会に驚いたのは私も同じで、多分同じように目を見開いているんだろう。 ワタルさんはしばらく私とハクリューを交互に見比べていたが、やがて納得したようにひとつ頷いた。 「ハクリュー、その人は敵じゃない。下がってもいいぞ」 その言葉にハクリューは数回瞬きをし、頭を垂れた。 『…若のお知り合いとは知らず、失礼をいたしました』 そしてぱちゃ、という水音を残して、水中へ姿を消す。 突然のことに、ハクリューが消えた一点を呆然と見つめる。 っていうか、ミニリュウやハクリューが言ってた"若"ってワタルさんだったんだ… 「大丈夫かい、カナエちゃん」 「あ…はい、」 「すまないね、あのハクリューはこの祠を守ってくれているんだよ。とりあえず、こっちに来るかい」 私は頷き、しずり、と呼ぶと、 『貴女って意外に顔が広いのね』 と、返ってきた。 |