1 「わたしは絶対、認めないからね」 「……はい?」 バトルが終わって開口一番、イブキさんが口にしたのは、なんとも信じがたい言葉だった。 「えーっと…認めないって言われても、私勝ったんですけど…」 それも、正に今。 しかし、イブキさんは憮然とした表情で私をにらみつけてくるだけだ。 私は、小さくため息をついた。 ロケット団との事件のあと、結局私たちはコガネシティで1日を過ごした。 確かに早く全てを知りたいんだけど、ここしばらく慌ただしくてゆとりをなくしていたから、休養という意味合いで。 やっぱり1日休めば気分は落ち着いてきて、焦りはほとんどなくなった。 そして今日の午前中にフスベへ移動して、ジムに挑んだわけ……なんだけど。 イブキさんはドラゴンタイプの使い手ということで、活躍したのはやっぱり垂。 進化して威力の増した吹雪は、見事イブキさんのハクリューを氷漬けにした。 次いで出して来たギャラドスは、タイプの関係でなぎが活躍し、放電が見事決まった。 一番苦戦したのは、やっぱりキングドラ。 タイプの弱点をつきにくい上に素早さが高いからなかなか先制できなくて。 それでも蒼衣の瞑想からサイコキネシスでなんとか勝利した……はずなんだけど。 「あの、イブキさ…」 「とにかく!わたしが負けたなんて…そうよ、何かの間違いよ!」 「や、間違いでもなんでもいいんですけど…勝ったものは、勝っ」 「そうだわ!」 私の言葉を遮って、イブキさんは突然叫んだ。 「このジムの裏に、竜の穴と呼ばれる洞窟があるわ。その中の祠へ行って、長老様に認められたなら、バッジをあげる」 「や、でも……、」 あまりの展開に言葉を濁していると、イブキさんはフフンと笑い、そして。 「あら、怖いの?そうよね、度胸も胸もなさそうだものね!」 ぷつ、と何かが切れる音がした気がする。 蒼衣がすす、と後ずさるのが視界の端に見えた。 「わかったわよ、行けばいいんでしょう?!そのかわり、戻ってきたらちゃんとバッジはくださいね!」 行くよ蒼衣、と手を引いて促すと、蒼衣が小さく溜息をついたのが聞こえた。 |