6


「…カナエ、」

ざあ、と秋の夜風が吹き抜ける。
カナエは「え、」と振り向いた。
頬が少し濡れている。
途端に、感情が僕の中に流れ込んでくる。

「…なんだ、蒼衣かぁ」

「なんだじゃないよ、カナエ」

ロケット団がいなくなった今、そんなに心配するようなことはないんだろうけど。
最近、カナエから目が離せないんだ。

どこかへ行ってしまいそうで。



最近、同じような夢をみる。
温かな金色の光の中で微笑むカナエ。
いつの間にかその姿は光に飲み込まれる。

――待って、

僕の声は届かない。
そして、そこでいつも目が覚めるんだ。

これが予知夢なのかどうかはわからない……けれど、ひどく不安になるんだ。



「…蒼衣?」

「なんでもないよ」

カナエは不思議そうに首を傾げたけど、それ以上は何も言わない。

空を見上げると、満天の星。
まるで、

「蒼衣と初めて会ったときを思い出すね」

「!」

驚いた。
カナエの言ったそれは、僕の考えていたこととまったく同じで。



あの日、僕は特にあてもなくさまよっていた。
春先のまだ冷たい夜風に吹かれて、草むらを掻き分けていた…そのとき。

――たすけて、

頭に響いてきたのは、助けを求める声。
その声に誘われるまま、僕は声の主を探した。
放っておけなかったんだ。
何故か、行かなきゃいけない気がしたんだ。



「あのときね、蒼衣に出会えてよかったって…最近、そう思うんだ」

「どうして?」

「内緒ー」

しかし、隠すつもりはないようで、答えはすぐに僕の中に流れ込んでくる。

それは僕も同じで、なんだかそれが嬉しい。

例えあの夢が正夢だとしても、僕はカナエのそばにいよう。



「さーて、蒼衣。そろそろ冷えてきたし、部屋に帰ろうか」

パタパタと土を払って立ち上がる。
僕はカナエの手を取って立ち上がる。


見上げれば、あのときと同じように丸い月が高くのぼっていた。


繋いだこの手は、離さない。


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