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「じゃ、カナエさんおやすみ!」

「おやすみ、ヒビキくん」

あのあと、サクラさんも間もなくエンジュへ戻った。
しばらく呆然と立ち尽くしていたけれど、やがて気を取り直す。
やることは、決まった。

カイトさんに別れを告げて、ヒビキくんと一緒にポケモンセンターまで歩いて、そして今に至る。

受付を済ませて、そのまま部屋へ。
ベッドに荷物を放り出して寝転ぶと、やっと落ち着いた気がする。

「カナエ」

頭上から蒼衣の声が振ってくる。

「なに、蒼衣」

枕から少し顔を上げると、蒼衣がすぐ傍にいた。

「僕はサーナイトに進化したこと、後悔してないよ」

やっぱり蒼衣には私の考えなどお見通しだったらしい。
数時間前の葛藤の答えを今、口にした。

「うん、ならよかった」

蒼衣がそれでいいと言うのなら、まあ、もう気にしないことにしよう。

一息ついたところで皆をボールから出すとすぐに人型になったが、炬は少しの間鼻を動かして首を傾げたあと、同じように擬人化した。

「しっかしまぁ、大変だったわねぇ」

どさりと風音がベッドに勢いよく座り込む。

「本当。お疲れ様、カナエちゃん」

なぎも風音の隣に腰掛ける。

「やっと一段落…かしらね」

進化した垂は、肩口くらいのゆるいウェーブがかった髪に、マーメイドドレス。元々大人びてたけど、尚更大人っぽくなったなぁ。

「ね、カナエちゃん。またあの舞妓さんに会ったの?」

炬の正面を避けるように翡翠は垂の横へ。……チョウジでのこと、まだ気にしてるな、これは。

「うん。フスベジムに挑戦したら、エンジュまで来るようにって…、」

そんな翡翠に苦笑しながら私は舞妓さんの言葉を思い出す。

「もちろん、行くんやろ?」

「…ヒビキくんが、ウツギ博士も私を呼んでるって言ってたんだ」

そんなに急いでないとは言っていたけど、やっぱり気になるものは気になる。

「カナエ。カナエはどうしたいの?」

正面から蒼衣が私を見据える。

「私は…、」

どちらを選んだとしても、いずれはもう片方に辿り着く。
なら、私は。

「先にフスベジムに行って…で、ウツギ博士のところに行ってからエンジュに行こう」

ジムを早く終わらせて、博士の話と舞妓さんの話をなるべく間を開けずに聞こう。
その方が何か、繋がるものが見つかるかもしれない。

「ん、了解。なら、今日は早く休んだ方がいい感じ?」

「そだね、今日はみんな疲れてるだろうし…なんなら、明日くらいは休養にしてもいいしね」

「まあ、それは明日決めてもいいんじゃないかしらね。それよりもアタシはもう疲れたんだわさ」

くあ、と風音は大きくあくびをひとつ。
風音にはフスベからコガネまで飛んでもらったし、疲れは尚更だろう。

「そうね、もう遅いしカナエちゃんも明日にしましょう?」

「うん…そうだね。みんな、ほんとにお疲れ様」

すると緊張切れたように、みんなだんだん眠そうになってくる。
部屋の布団をありったけ出してひいてやると、みんな次々に眠り始めた。


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