6 「じゃ、カナエさんおやすみ!」 「おやすみ、ヒビキくん」 あのあと、サクラさんも間もなくエンジュへ戻った。 しばらく呆然と立ち尽くしていたけれど、やがて気を取り直す。 やることは、決まった。 カイトさんに別れを告げて、ヒビキくんと一緒にポケモンセンターまで歩いて、そして今に至る。 受付を済ませて、そのまま部屋へ。 ベッドに荷物を放り出して寝転ぶと、やっと落ち着いた気がする。 「カナエ」 頭上から蒼衣の声が振ってくる。 「なに、蒼衣」 枕から少し顔を上げると、蒼衣がすぐ傍にいた。 「僕はサーナイトに進化したこと、後悔してないよ」 やっぱり蒼衣には私の考えなどお見通しだったらしい。 数時間前の葛藤の答えを今、口にした。 「うん、ならよかった」 蒼衣がそれでいいと言うのなら、まあ、もう気にしないことにしよう。 一息ついたところで皆をボールから出すとすぐに人型になったが、炬は少しの間鼻を動かして首を傾げたあと、同じように擬人化した。 「しっかしまぁ、大変だったわねぇ」 どさりと風音がベッドに勢いよく座り込む。 「本当。お疲れ様、カナエちゃん」 なぎも風音の隣に腰掛ける。 「やっと一段落…かしらね」 進化した垂は、肩口くらいのゆるいウェーブがかった髪に、マーメイドドレス。元々大人びてたけど、尚更大人っぽくなったなぁ。 「ね、カナエちゃん。またあの舞妓さんに会ったの?」 炬の正面を避けるように翡翠は垂の横へ。……チョウジでのこと、まだ気にしてるな、これは。 「うん。フスベジムに挑戦したら、エンジュまで来るようにって…、」 そんな翡翠に苦笑しながら私は舞妓さんの言葉を思い出す。 「もちろん、行くんやろ?」 「…ヒビキくんが、ウツギ博士も私を呼んでるって言ってたんだ」 そんなに急いでないとは言っていたけど、やっぱり気になるものは気になる。 「カナエ。カナエはどうしたいの?」 正面から蒼衣が私を見据える。 「私は…、」 どちらを選んだとしても、いずれはもう片方に辿り着く。 なら、私は。 「先にフスベジムに行って…で、ウツギ博士のところに行ってからエンジュに行こう」 ジムを早く終わらせて、博士の話と舞妓さんの話をなるべく間を開けずに聞こう。 その方が何か、繋がるものが見つかるかもしれない。 「ん、了解。なら、今日は早く休んだ方がいい感じ?」 「そだね、今日はみんな疲れてるだろうし…なんなら、明日くらいは休養にしてもいいしね」 「まあ、それは明日決めてもいいんじゃないかしらね。それよりもアタシはもう疲れたんだわさ」 くあ、と風音は大きくあくびをひとつ。 風音にはフスベからコガネまで飛んでもらったし、疲れは尚更だろう。 「そうね、もう遅いしカナエちゃんも明日にしましょう?」 「うん…そうだね。みんな、ほんとにお疲れ様」 すると緊張切れたように、みんなだんだん眠そうになってくる。 部屋の布団をありったけ出してひいてやると、みんな次々に眠り始めた。 |