5 「タマオ姉さんからの伝言どす。準備があらかた調いましたので、ジムバッジを8つ集めたら…エンジュの歌舞練場まで来てくれますやろか?そこで全てをお話しましょ」 『姫君のお陰で"災厄"は去った…感謝いたします』 サクラさんとエンテイは口々に言う。 「エンジュの歌舞練場…今すぐじゃ、駄目なんですか?」 話してくれるというのなら、一刻も早く。 私は、知りたいのに。 しかし、サクラさんは首を横に振る。 「言いましたやろ、"あらかた調った"って。まだもう少し、時間がいりますのん」 『姫君…しばしの間、お待ちくだされ』 「そう…ですか、」 また落胆する自分がいる。 ううん、落ち込んではいられない。 あと少し…あと少しで、何かがわかるんだから。 「ほな、伝言しましたさかい、うちはこの辺で。エンテイはんはどないしはります?」 『私もエンジュへ戻ろう。スイクンらもじきにエンジュへ戻ってくるだろうしな』 …ふと、その一連のやり取りに、私はある違和感を覚えた。 答えが得られるかはわからない。 …でも、 「あの、サクラさん。最後にひとつ、いいですか?」 「なんですやろ?」 「サクラさんは…ポケモンの言葉がわかるんですか?」 さっき感じた違和感。 サクラさんは、あたかもエンテイと話しているかのようだった。 言うまでもなく、エンテイは擬人化などしない。 うーん、と小首を傾げ、サクラさんは何か考え、そして。 「ほんまは秘密なんですけど、なんもかも秘密やったら可哀相やしなぁ…うちから聞いたって、言わんといてくれます?」 いたずらっぽく言うサクラさんの言葉に、私は頷く。 「ほな…これはうちだけやなぁて、お姉さん方もなんやけども。この力は、お借りしてるだけ…カナエはんみたぁに、自身のものとはちやいますのん」 「…え?」 サクラさんの言葉を反復する。 同じ原型のポケモンの言葉がわかる力でも、サクラさんの力は借り物で、私のものは……、 「それ、どういう…?!」 「勘忍ね、これ以上はあきません。エンジュに来はったら、お話しますよし」 ご容赦を、と、サクラさんは困ったように笑って言った。 「ほな、今度こそ日ぃが暮れてしまうさかいに、この辺で」 『私は先にエンジュへ戻るぞ…姫君、いずれまた』 そしてエンテイの姿は、ごう、と風と共に掻き消える。 風が、サクラさんのかんざしをシャラシャラと撫でた。 |