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「タマオ姉さんからの伝言どす。準備があらかた調いましたので、ジムバッジを8つ集めたら…エンジュの歌舞練場まで来てくれますやろか?そこで全てをお話しましょ」

『姫君のお陰で"災厄"は去った…感謝いたします』

サクラさんとエンテイは口々に言う。

「エンジュの歌舞練場…今すぐじゃ、駄目なんですか?」

話してくれるというのなら、一刻も早く。
私は、知りたいのに。

しかし、サクラさんは首を横に振る。

「言いましたやろ、"あらかた調った"って。まだもう少し、時間がいりますのん」

『姫君…しばしの間、お待ちくだされ』

「そう…ですか、」

また落胆する自分がいる。
ううん、落ち込んではいられない。
あと少し…あと少しで、何かがわかるんだから。

「ほな、伝言しましたさかい、うちはこの辺で。エンテイはんはどないしはります?」

『私もエンジュへ戻ろう。スイクンらもじきにエンジュへ戻ってくるだろうしな』

…ふと、その一連のやり取りに、私はある違和感を覚えた。
答えが得られるかはわからない。
…でも、

「あの、サクラさん。最後にひとつ、いいですか?」

「なんですやろ?」

「サクラさんは…ポケモンの言葉がわかるんですか?」

さっき感じた違和感。
サクラさんは、あたかもエンテイと話しているかのようだった。
言うまでもなく、エンテイは擬人化などしない。

うーん、と小首を傾げ、サクラさんは何か考え、そして。

「ほんまは秘密なんですけど、なんもかも秘密やったら可哀相やしなぁ…うちから聞いたって、言わんといてくれます?」

いたずらっぽく言うサクラさんの言葉に、私は頷く。

「ほな…これはうちだけやなぁて、お姉さん方もなんやけども。この力は、お借りしてるだけ…カナエはんみたぁに、自身のものとはちやいますのん」

「…え?」

サクラさんの言葉を反復する。
同じ原型のポケモンの言葉がわかる力でも、サクラさんの力は借り物で、私のものは……、

「それ、どういう…?!」

「勘忍ね、これ以上はあきません。エンジュに来はったら、お話しますよし」

ご容赦を、と、サクラさんは困ったように笑って言った。

「ほな、今度こそ日ぃが暮れてしまうさかいに、この辺で」

『私は先にエンジュへ戻るぞ…姫君、いずれまた』

そしてエンテイの姿は、ごう、と風と共に掻き消える。
風が、サクラさんのかんざしをシャラシャラと撫でた。


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