4 どれくらいそうしていただろうか。 いつの間にか涙はすっかり引いていた。 あの感覚は、一体何だったんだろう…? 「もうこんな時間か」 カイトさんの言葉に窓の外を見ると、空の半分以上を夜が占めている。 「ほんとだ…今日はもうコガネに泊まろっか?」 ね、と蒼衣を見遣れば小さく頷いた。 この暗闇じゃ、風音が飛ぶのも難しいだろう。 「ヒビキくんは?」 「オレはじいちゃん家に行くよ。すぐそこだし」 そういえばそうだった。 なんだか少し、うらやましいな。 …まあ、そういうわけで。 明日の予定についてもみんなで話さないとだし、そろそろポケモンセンターに向かおうと、扉を開いた…その先に。 「…!」 「ああ、やぁっと出てきはった。ずいぶんお待ちしてましたんえ?」 はんなり微笑むのは、見覚えある艶やかな着物姿。 エンジュの、舞妓さん…誰かはわからないが…だ。 そして、その隣には。 『姫君、』 ジョウトの伝説のポケモンの一体…エンテイが恭しく傅いた。 これにはヒビキくんやカイトさん、局長も驚きを隠せないでいる。 「え…え?!これってエンテイだよね?!」 ヒビキくんはバタバタとポケットを漁り、急いで図鑑をかざす。 『"これ"とは何事か。口を慎め、小僧』 不機嫌そうにエンテイはヒビキくんに向かって口を開く…が、残念ながらヒビキくんには伝わらない。 いや、エンテイも気になるけどそれよりも…今まで事あるごとに接触してきたエンジュの舞妓さん…今回もまた、何かあるのだろうか? すると、私の視線を察したのか舞妓さんは一歩、前に出た。 「あ、はじめましてになります。うちは舞妓のサクラですのん。下から数えて2番目です」 以後よろしゅう、と優雅に一礼する。 これで、5人目…か。 「早速ですけども、カナエはん。お姉さん方から伝言を預かってきましたのん」 「伝言?」 そうどす、とサクラさんは頷き、ちらりと私の後ろ…ヒビキくんたちを見る。 何かを察した局長が、ヒビキくんとカイトさんを連れて署の中へ戻ってくれた。 サクラさんはそれを確認すると、こほんとひとつ、咳ばらいをした。 |