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どれくらいそうしていただろうか。
いつの間にか涙はすっかり引いていた。
あの感覚は、一体何だったんだろう…?

「もうこんな時間か」

カイトさんの言葉に窓の外を見ると、空の半分以上を夜が占めている。

「ほんとだ…今日はもうコガネに泊まろっか?」

ね、と蒼衣を見遣れば小さく頷いた。
この暗闇じゃ、風音が飛ぶのも難しいだろう。

「ヒビキくんは?」

「オレはじいちゃん家に行くよ。すぐそこだし」

そういえばそうだった。
なんだか少し、うらやましいな。

…まあ、そういうわけで。
明日の予定についてもみんなで話さないとだし、そろそろポケモンセンターに向かおうと、扉を開いた…その先に。

「…!」

「ああ、やぁっと出てきはった。ずいぶんお待ちしてましたんえ?」

はんなり微笑むのは、見覚えある艶やかな着物姿。
エンジュの、舞妓さん…誰かはわからないが…だ。
そして、その隣には。

『姫君、』

ジョウトの伝説のポケモンの一体…エンテイが恭しく傅いた。
これにはヒビキくんやカイトさん、局長も驚きを隠せないでいる。

「え…え?!これってエンテイだよね?!」

ヒビキくんはバタバタとポケットを漁り、急いで図鑑をかざす。

『"これ"とは何事か。口を慎め、小僧』

不機嫌そうにエンテイはヒビキくんに向かって口を開く…が、残念ながらヒビキくんには伝わらない。

いや、エンテイも気になるけどそれよりも…今まで事あるごとに接触してきたエンジュの舞妓さん…今回もまた、何かあるのだろうか?

すると、私の視線を察したのか舞妓さんは一歩、前に出た。

「あ、はじめましてになります。うちは舞妓のサクラですのん。下から数えて2番目です」

以後よろしゅう、と優雅に一礼する。
これで、5人目…か。

「早速ですけども、カナエはん。お姉さん方から伝言を預かってきましたのん」

「伝言?」

そうどす、とサクラさんは頷き、ちらりと私の後ろ…ヒビキくんたちを見る。
何かを察した局長が、ヒビキくんとカイトさんを連れて署の中へ戻ってくれた。
サクラさんはそれを確認すると、こほんとひとつ、咳ばらいをした。


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