3 「カナエさーん!」 表で電話をしていたらしいヒビキくんがポケギア片手に戻ってきた。 後ろにはいつの間に出したのか、ポケモンが控えている。 あれは何だろう? 何となく蒼衣…サーナイトに似てる気がするんだけど、サーナイトでもキルリアでもないし… 「心太、」 ガタ、と蒼衣が立ち上がり…って、 「え?ヒビキくん、その後ろのポケモン…心太くんなの?」 心太くんならラルトスだったから、蒼衣みたくなるはずじゃ…? その問いをぶつけてみると、 「キルリアの雄は石を使うとエルレイドに進化するんだよ」 との答えが返ってきた。 うーん、イーブイみたいなものなのかな? 進化が選べるなら、蒼衣ももしかしたらエルレイドになりたかったかもしれない。 知らなかったから仕方ないとはいえ、選ばせてあげたかったなぁ。 ちらりと蒼衣を見遣れば、心太くんと一緒にさっきカイトさんに出されたお茶をすすっていた。 (何か通じるものがあったらしく、心太くんも蒼衣だと気付いたようだ) (相変わらず蒼衣は渋い味が苦手なようで、微妙そうな顔をしていた) 「あ、それでさカナエさん。さっきウツギ博士と電話してたんだけど、一段落したら一度研究所に来てくれないかって」 「あ、うん。急ぎの用事?」 「さぁ…内容までは聞いてないけど、そんなに急ぎってわけでもなさそうだったかな」 ふぅん…? なら、どうしようかなぁ…ジムバッジもあとはフスベだけだし、フスベが終わってからでもいいのかな? まあ、その辺りは今晩にでもゆっくり考えよう。 ここまできたら、キリよくジムも攻略してしまいたいという気持ちもないではない。 「カナエちゃん…と、いったかな」 にこにこと私たちを見ていた局長が、不意に口を開いた。 「今日のお礼と言ってはなんじゃが…これを、」 そう言って局長は、私の手にふわりとそれを握らせた。 「珍しいものなので持っていたんじゃが、よければ君に差し上げよう」 「きれい…、」 それは、一枚の羽根だった。 光の角度によってきらきらとその色を変化させるその羽根はなんだか温かい。 「カナエ、さん?」 それは無意識だった。 ツツ、と涙が頬を伝う。 「カナエ…、」 蒼衣がそっと肩に手を添える。 「ううん、なんでもない…なんでもないよ」 理由はわからない。 でも、何故か。 とても温かくて懐かしい…そんな気が、した。 |