5


終わってしまった…なにもかもが。
私は、何を間違えてしまったのでしょうか。
何が、間違っていたのでしょうか。


サカキ様が行方不明となったそのときから、私はロケット団を潰すまいと必死になってきた。
サカキ様が作った組織を、その野望を。
守ることが、最大の恩返しになるのだと信じて。

ロケット団を再興させれば、サカキ様は再び戻ってくるのではないか…そんな期待を込めて、私はただがむしゃらに活動を続けた。

罪のない人々やポケモンに手を出すことに、正直抵抗がなかったといえば嘘になる。
でも、それ以上に私にとってはサカキ様の野望を代わりに達成することの方が、遥かに重要だった…はずなのに。


ふと、コガネで出会った少女の言葉が頭を過ぎる。

「正すこともまた、礼を返すこと…か、」

わかっていた、そんなこと。
ただ、そうするとサカキ様が帰ってきたときの場所がなくなるような気がして。
サカキ様が戻って来ないような気がしてならなかった。

しかし、そんな私の独りよがりに近い思いにも、たくさんの者が力を貸してくれた。
例えその動機が、何だったとしても。

ランス…お前の努力は、しっかり見ています。貴方の力は、大いに役立ちましたよ。

ラムダ…欲しかった刺激は、ここで得られましたか?貴方のことだから、まだ物足りないかもしれませんね。

アテナ…貴女の想いには、気付いていました。応えられず、すみませんでしたね。

そして、多くのロケット団員の諸君…ありがとう。

私がこれから何をすべきなのかはわからない…
しかし、ただひとつ言えることは、サカキ様…私を拾い育ててくださり、ありがとうございました。


「行きましょうか、ヘルガー」

足元で退屈そうにあくびをしていたヘルガーが、フンと鼻を鳴らして立ち上がった。

夕焼けと夜の狭間に向かい、私達は歩き始めた。


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