3 本当の強さって一体何だ? 強いポケモン、力こそが全て。 そう思ってた。 そう、信じてた。 ポケモンセンターの一室で、ぼんやりとそんなことを考える。 何年前だろうか…ああ、3年くらいだったか。 ロケット団は、壊滅寸前まで追い込まれた。 当時のオレはまだまだガキで、何が起こったのか理解できなかった。 ただ覚えているのは、親父がたった一人の、オレとそう変わらない年頃のヤツに負けた。 負けて、逃げ出した。 それだけだった。 今まで信じてきたものは一体何だったのか。 強さこそが正義じゃなかったのか。 親父はその日を境に、姿を消した。オレを残して。 寂しくなかったといえば嘘になる。 でも、それ以上に親父に対する失望は大きかった。 だからオレは決めたんだ。 オレ一人の力で強くなってやるって。 そのためにはポケモンが必要だ。 だから、オレは。 ウツギ研究所から、ポケモンを盗んだ。 多少の罪悪感はあった。 でも、何としてもポケモンが欲しかったんだ。 ポケモンは何でもよかった。 強ささえあれば。 ただ、何となく。こいつに…ヒノアラシに、呼ばれた気がしたんだ。 追っ手は間もなくやってきた。 オレとそう変わらないくらいの、ヒビキ。 少し欝陶しくもあったが、同じ年頃の好敵手。 嫌いでは、なかった。 そんな中、一人の女と出会った。 初めて会ったのはエンジュ…いや、そういえばキキョウだったか。 まっすぐ自分のポケモンと向き合ってるのが少し、羨ましく見えた。 もう二度と会うことはないだろうと思っていた反面、どこかで再会を期待していた、そんなとき。 コガネでロケット団が何か動き始めたという噂を聞いた。 親父が帰ってきたのかという淡い期待と、何で今更という複雑な思いでコガネに向かえば、そこに居たのはいつだったか親父が連れて来たアポロとかいう奴。 落胆でむしゃくしゃして、無闇に喧嘩を売った、そのとき。 あの女と、再会した。 それはまったくの偶然だったのかもしれない。 なし崩し的に一緒に戦って、少しだけ。少しだけど、あいつらの絆の理由が…わかった、気がした。 それと同時に、やはりバクフーンを盗んでしまったという思いに駆られる。 …研究所へ行こう。 どんな理由があろうとバクフーン…ヒノアラシを盗んでしまったという事実に変わりはない。 返せと言われれば、甘んじてそれを受けよう。 何かを察したのか、ぐる…とバクフーンが寄って来た。 「……焔(ホムラ)、」 研究所でこいつを選んだときから、ずっと決めていた名前。 気恥ずかしい気がして、呼ぶことができなかった名前。 ぎゅ、とバクフーン…焔は一鳴きして、オレの膝に前足を乗せた。 まるでそれは「遅ぇよ」と言っているようだった。 |