2 チン、と軽快な音を立ててエレベーターはゆるりと止まる。 途中に人質のいそうな部屋は見当たらず、とりあえず私は最上階…展望室を目指すことにしたのだ。 途中何人かのロケット団員と戦ったけど、その数は予想よりずっと少ない。 そして、エレベーターの扉はゆっくりと開く。 「ようこそ、カナエさん」 そこに、居たのは。 「はじめまして。私はアポロと申します。現在はサカキ様に代わり、ロケット団の活動を仕切らせていただいています」 以後お見知りおきを――と、彼…アポロさんは言う。 私は…アポロさんから目が離せなかった。 それは緊張感のせいではなく、むしろその逆…敵意が。アポロさんから、敵意が感じられないのだ。 その双眸は、まるで親しい客人を招き入れるかのような…そんな光を宿していた。 「アテナやランスから聞いていますよ。おもしろい子がいる…と」 「…どうも、」 おかしい。こんな優しい目をした人が、ロケット団を仕切っている…? そんな思いが頭を巡り、言葉が出てこない。 そんな私を見たアポロさんはフ、と笑って近くのベンチを指した。 「…話しませんか?私だって、無闇に戦いたいわけではないのです」 アポロさんに促されるまま私はベンチに腰を下ろし、アポロさんも向かい側に腰掛ける。 「あの…、」 「誤解しないように言っておきますが」 私の言葉を遮り、アポロさんは言う。 「我らロケット団がポケモンを使って世界を掌握する…その目的に、違いはありません」 「じゃあ…、」 どうして、今こうしてこんなにも敵意なく話をしているのだろう? アポロさんは続ける。 「…しかし、私個人としてはあまり争いたくないのも、また事実」 「なら…なら、どうしてあなたは…アポロさんはロケット団に居るんですか?」 私の問いに。 アポロさんは、フッと笑みを浮かべる。 …それは、遠くを見ているような、そんな悲しい笑み。 「……昔、」 アポロさんは遠くを見つめたまま、話し出した。 「昔…私は孤児でした。行く宛てもなく、たださ迷っていた私を拾い導いてくださったのが、サカキ様」 「……!」 それは、予想だにしなかった事実だった。 |