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チン、と軽快な音を立ててエレベーターはゆるりと止まる。

途中に人質のいそうな部屋は見当たらず、とりあえず私は最上階…展望室を目指すことにしたのだ。
途中何人かのロケット団員と戦ったけど、その数は予想よりずっと少ない。

そして、エレベーターの扉はゆっくりと開く。

「ようこそ、カナエさん」

そこに、居たのは。

「はじめまして。私はアポロと申します。現在はサカキ様に代わり、ロケット団の活動を仕切らせていただいています」

以後お見知りおきを――と、彼…アポロさんは言う。
私は…アポロさんから目が離せなかった。
それは緊張感のせいではなく、むしろその逆…敵意が。アポロさんから、敵意が感じられないのだ。
その双眸は、まるで親しい客人を招き入れるかのような…そんな光を宿していた。

「アテナやランスから聞いていますよ。おもしろい子がいる…と」

「…どうも、」

おかしい。こんな優しい目をした人が、ロケット団を仕切っている…?
そんな思いが頭を巡り、言葉が出てこない。

そんな私を見たアポロさんはフ、と笑って近くのベンチを指した。

「…話しませんか?私だって、無闇に戦いたいわけではないのです」

アポロさんに促されるまま私はベンチに腰を下ろし、アポロさんも向かい側に腰掛ける。

「あの…、」

「誤解しないように言っておきますが」

私の言葉を遮り、アポロさんは言う。

「我らロケット団がポケモンを使って世界を掌握する…その目的に、違いはありません」

「じゃあ…、」

どうして、今こうしてこんなにも敵意なく話をしているのだろう?
アポロさんは続ける。

「…しかし、私個人としてはあまり争いたくないのも、また事実」

「なら…なら、どうしてあなたは…アポロさんはロケット団に居るんですか?」

私の問いに。
アポロさんは、フッと笑みを浮かべる。
…それは、遠くを見ているような、そんな悲しい笑み。

「……昔、」

アポロさんは遠くを見つめたまま、話し出した。

「昔…私は孤児でした。行く宛てもなく、たださ迷っていた私を拾い導いてくださったのが、サカキ様」

「……!」

それは、予想だにしなかった事実だった。


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