6


『――カナエ!』

そのとき。
炬の声が響いた。

『あたしは大丈夫やし。しっかりしぃ!』

――そうだ。
私が炬なら大丈夫だと信じた。
なら、最後まで信じなきゃ…!

「うん!炬、フレアドライブ!」

ラフレシアの水のエネルギーが炬に届くよりも早く。
炬は炎の鎧を身に纏い、身を屈める。
……そして、

『きゃああっ?!』

『すまんな、二度も同じ相手には負けられんのよ』

どさりと崩れ落ちたラフレシアを見下ろして、炬は呟いた。
その姿が、なんだか頼もしい。

「チィ…っ、」

チョウジからそんなに時間は経っていないから、アテナさんの手持ちは恐らくアーボックだけ。
あとがなくなったアテナさんの表情から、余裕が消えた。
…と、思った次の瞬間。

「ふ…ふふっ」

突然、アテナさんは笑い出した。
一体何を、

アテナさんは私を睨み付け、絞り出すような声で言葉を紡ぐ。

「…負けられない…負けるわけには、いかないのよ…っ!」

「…っ!」

何をしてでも、と。
それはアテナさんが初めて見せた、感情らしい感情。
その迫力に呑まれそうになる。
何が…何が、アテナさんをそうさせるのか。

――私のその視線に気付いたのか、アテナさんはふんと鼻を鳴らす。

「言わなかったかしら?…アナタにはわからないって。いつも仲間と一緒のアナタには、ね…」

その言葉の最後の方は消え入りそうで、なぜかとても切ない響きで。

「だから、アタシはアナタに負けるわけには、いかないのよ!」

そして私をキッと睨み付け、最後のボールを放り投げる。

「アーボック、いきなさい!」

『アテナ、安心なさい。私に任せて』

それは母のような姉のような、慈しむような響きのアーボックの言葉。
悲しいかな、アテナさんには……伝わらない。

『カナエ、あたしにやらせてや』

アーボックを見据えたまま、炬は言う。

「ん、お願い炬」

私の返事を確認すると、炬は一歩前に出た。

『あなたも…』

炬の目を見たアーボックは、ふとそう呟いた。

『あん?』

『……何でもないわ。私はアテナを悲しませたくない。それだけよ』

『奇遇やな。あたしもやわ』

『そうね…じゃあ、始めましょう?』

アーボックの言葉を皮切りに、戦いが再開された。


[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -