4 柔らかな光が垂を包み込む。 「し、ずり?」 何度か見たことのある光。 これは、 『……あら?』 光は徐々に消えゆき、そこにいたのは純白の流線型が美しい、ジュゴン。 「チッ…!ヤミカラス、さっさとトドメをさしなさい!」 アテナさんは悔しそうに歯噛みし、ヤミカラスに指示を飛ばす。 『進化したって一緒よ!アンタもうボロボロじゃない!』 じゃーね、サヨナラ!とヤミカラスが翼を振りかぶった、その瞬間。 「垂、冷凍ビーム!」 油断したヤミカラスが接近したその瞬間。 至近距離で冷気を放つ。 『きゃああっ!』 さすがにこれは避ける術がなく、ヤミカラスはよろめき地に落ちる。 「ふぅん…さすがね、カナエちゃん」 さして悔しい風でもなく、淡々とアテナさんは地に臥すヤミカラスを見つめ、言う。 「戻りなさい」 ヤミカラスをボールに戻し、小さく溜息をつく。 「ねぇ、ひとつ聞いてもいいかしら。アナタを動かすその原動力は、一体何なの?」 それはいつものように蠱惑的なアテナさんではなく、純粋に、そう問い掛けてきた。 「だってそうでしょう?最初のヒワダでだってアナタや、アナタのポケモンに手を出したわけでもないのに首を突っ込んできて…チョウジでもそう。先にアタシたちのアジトに入ってきたのはアナタ」 アタシたちにとっては正当防衛よね、とアテナさんは言う。 「ねぇ、どうして?」 それは、初めて見るアテナさんの純粋な質問。 どうして…確かに、アテナさんの言うことにも一理ある。 私は…この世界では…ただの一トレーナーで、関わらずに旅を続けることだって選べたはずなのに。 「…わからない」 でも、いくらそれを選べたとしても、既に私はこの道を選んでいる。 それが私の後悔しない選択肢だから。 理由なんてそれで十分じゃないだろうか? 「ふぅん…まぁ、いいわ。知ったところで、どういうわけでもないし」 続けましょ、とアテナさんはふたつめのボールを構える。 「ラフレシア!」 前回苦戦したラフレシア…背筋に少し緊張が走る。 「垂、もう少しお願い!」 『ええ!』 垂のダメージが溜まっているのもわかってる。 でも、もう少し…、 「ラフレシア!メガドレイン!」 「垂、氷のつぶて!」 かくて、第2戦が始まった。 |