2 「……あのさ、カナエさん」 不意に、ヒビキくんが言い出し辛そうに口を開いた。 「なに、ヒビキくん」 ヒビキは少し悩んで、そして思い切ったように口を開いた。 「オレ、あいつ…シルバーともう一度ちゃんと話してみたいんだ!今ならまだその辺に居ると思うし…だから、」 「いいよ、行っておいでよ」 多分、一緒に先に進めないことに引け目を感じていたんだろう。 確かにひとりで先に進むのは不安だけど、まったくのひとりじゃない。 私には、みんながいる。 それに多分、ヒビキくんは今行かなかったらすごく後悔すると思うから。 「ありがとう、カナエさん!」 ヒビキくんはぱぁっと顔を明るくして、そして走り出す。 「あとで追い付くから!」 カカカッと勢いよく階段を滑り降りる音が響き、やがてその姿は見えなくなる。 「さて…と」 あっという間に元通りになり、私は小さく気合いを入れ直す。 さっきとひとつ違うのは、私の手には目の前の扉を開くためのカードキー。 スッとカードを装置にスライドさせると、ピピッという音の後、カチャリとロックの外れる音がした。 「本物だったんだ…、」 100%疑ってたわけじゃないけど、やっぱりそれなりに疑惑は抱いていた。 もしかしたら、罠かもしれない… だからこうもあっさり扉が開くと、少し拍子抜けする。 でも、こうして扉は開かれた。 もう、あとには引けない。 「なんとかなる…よ」 自分に言い聞かせるように呟いて一歩。 私は扉の内側に足を踏み入れる。 カチャ、と再びロックのかかる音が響いた。 あ、そういえばヒビキくんどうやって追い付くんだろう。 …まぁ、いいか。 扉の内部にひとり。 さて、これからどうするか。 「ウツギ博士の話だと、どこかで局長が人質になってる…んだよね」 だとしたら、人質の安否が第一かな。 近くに何かないかと見渡すと、上へ続く階段。 それ以外には、特に何も見当たらない。 つまり、 「この先に…、」 多分、局長はいる。 そして、戦力も集中している。 気を引き締めて行こう。 今更ながら、それを意識した途端に少し足が震えてきた。 大丈夫、なんとかなる。 いつものようにそう呟いて、階段に一歩、足を踏み出した。 |