6 「そうだ、僕のお古で悪いんだけど、ポケギアを貸してあげよう。何かあったら、これで連絡してくるといいよ。それから、これはポケモン図鑑。見つけたポケモン、捕まえたポケモンが自動的に記録されていく。あとは傷薬も一応渡しておこうか。少しで悪いんだけれどね。あとは…そうだ、僕からの餞別ということで、ここにいる3匹のポケモンから、好きなのを1体連れて行くといいよ。仲間が多い方が何かと安心だろう」 博士はここまで私に色々手渡しながら一気に喋り、最後に部屋の真ん中にある装置を指さした。 そこにあるのは、3つのモンスターボール。 中には赤や緑や青のポケモン達。 どの子もすごく可愛くて、迷ってしまう。 3つのボールを交互に何度も見て、私は決めた。 「この子にします」 私が選んだのは、頭に葉っぱのようなものがついた緑色のポケモン。 昔この子を選んでプレイしていた、っていうのもあるけれど、実際に見てみると赤い大きな瞳が印象的で、その目に惹き込まれた。 「この子はチコリータ。見ての通り、草タイプだ」 博士からチコリータの入ったボールを受け取り、さっきと同じようにしてボールから出してやる。 ボールから出てきたチコリータは、キョロキョロと辺りを見回して、不思議そうな顔をする。 そして、最後に私の方を向き、「チコ!」と一鳴きして私の胸に飛び込んできた。 「わ!」 ぼすん、とチコリータは私の腕の中に収まる。 人懐っこい性格なのか、抱えた私の腕に何度も頬ずりをしてきて、小さなしっぽがパタパタ揺れる。 「この子はこの3匹の中でも一際わんぱくでね。一緒に旅をすれば、きっと賑やかで楽しいと思うよ」 そんな私たちの様子を見て、苦笑しながら博士は言った。 「ね、カナエさん。名前付けてあげなよ。蒼衣みたいにさ」 さっきまで、マリルと遊んでいたコトネちゃんが言った。 「そうね……」 呟いて、考える。 綺麗な緑の葉っぱがとても綺麗なチコリータ。 「翡翠。君の名前は翡翠。どうかな?」 問うと、チコリータはぱちくりと数回瞬きした後、「チコ!」とまた嬉しそうに一鳴きした。 そうだ。 「蒼衣、こっちにおいで!仲間ができたんだよ!」 少し離れたところに居た蒼衣に声をかけると、恐る恐る近づいてきた。 翡翠はそんな蒼衣を見つめ、タタタと彼の方に駆け寄る。 「チコ、チコ!」「ルル、」 何を話しているのかはよくわからないけれど、仲が悪くはなさそうだ。 そんな2匹の様子を見て、なんだか微笑ましく思った。 翡翠が蒼衣のひらひらとした裾のようなものをひっぱって悪戯してる。 いやいやと蒼衣が身体を動かしたとき、異変は起こった。 |