3 「っせぇんだよ、このガキ!!」 ラジオ塔に足を踏み入れた私を迎えたのは、そんな怒鳴り声だった。 無論、それは私に向けられたものではない。 ガキ…ってことは、まさかヒビキくんだろうか? 視線を声のした方にゆっくり移動させる。 「っ!」 そこに、いたのは。 「シルバー…くん、」 赤い髪に少し目付きの悪い眼差し。 エンジュで会ったきりの…、 どうして彼がここに。 傍観しているうちにも、事態はどんどん進んでいく。 騒ぎを聞き付けたのか、ロケット団員がもうひとり現れたのだ。 シルバーくんは小さく舌打ちをし、流石に少し動揺を見せる。 助けにいくべきだろうか、やっぱり。 ……と。 一瞬視線を泳がせたシルバーくんと、目が合った。 彼は眉間にシワを寄せる。 恐らく、何でお前がここにいる…といったところか。 えぇい、ままよ! 私は走りだし、シルバーくんの隣に立つ。 「手伝うよ」 やっぱり、放ってなんておけないじゃない。 「…っ!別にお前の助けなんて、」 「そんなこと言ってる場合じゃ、ないんじゃない?」 視線を前に戻せば、ロケット団員たちは既にボールを構えている。 「なんだぁ、早速仲間割れか?」 「んー、っていうか仲間ではないけど助っ人にね」 「はぁ?」 シルバーくんも隣でぶつぶつ何か言っていたけど、やがて「足引っ張るなよ」と、聞こえるか聞こえないかの声でぼそりと呟いた。 思わぬダブルバトルが、始まった。 「いけ!ゴルバット!」 「やれ、ラッタ!」 「翡翠、よろしく!」 「バクフーン!」 シルバーくんが選んだバクフーンは、 「!」 『っ、』 翡翠が息を飲む気配が伝わってくる。 まさか、同時に出るなんて。まずいな…動揺してないといいんだけど。 しかしそれは杞憂だったみたいで、バトルが始まればいつもの翡翠だった。 「翡翠、リフレクター!」 バクフーンは確か防御があまり強くなかったように思う。 なら、先手を打ってサポートを。 翡翠とバクフーンは、一瞬薄い殻のようなものに包まれ、それはすぐに見えなくなった。 「ふん…!バクフーン、ラッタに火炎車!」 言うが早いか、バクフーンは指示と同時に飛び出し、火炎車を決める…が、流石に一撃では倒れない。 よろよろ起き上がり、体勢を立て直す。 「ちっ…!ラッタ、電光石火だ!」 ラッタは加速すると、バクフーンの懐に飛び込む。 翡翠のリフレクターのおかげで軽減されてるはずだけど、それでもそれなりにダメージはある。 『くそっ』 悪態をつきながらも、バクフーンはすぐに構え直す。 「バクフーン!炎の渦!」 すかさず放った炎で相手の2体を閉じ込める。 そして、炎がおさまったそこには、ラッタが倒れていた。 |