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「ね、カナエ。説明してくれるんでしょう?」

出口へ向かう道すがら。
垂は、そう聞いてきた。
何を、とは言わないし、私にだってわかっている。
…どう言ったらいいかは、悩むところだけれど。

「ん…っと。なんていうか…」

それはつたない説明だったかもしれない。
私にだって、何があったのかいまだにわからないんだから。
それでも、さっき私の身に起きた不思議な出来事をぽつぽつと、垂に話した。

「え…ちょっと待って、カナエ。じゃあ、あの氷はカナエが溶かしたっていうの?」

小さく眉間にシワを寄せて、垂は何かを考え込む仕草を見せる。

「今の話は唐突には信じられないけど…カナエが原型の私たちと話せることを考えたらありえない話じゃないわ」

さすがに垂は頭の回転が早いのか、ひとまず先程私たちが出した結論までたどり着いた。

「それとあとひとつ、聞きたいんだけど。さっき私が連れて来た女性…カナエについて何か知っているような口ぶりだったけど、何者なのかしら?」

「あ…そっか。垂は会ったことなかったっけね。私も結局詳しくは知らないけど、エンジュの舞妓さん…さっき会ったコモモさんを含めて、今会ってるのは4人」

「…そんなにいるの?」

それは私も思った。
ゲーム内でも確か舞妓さんがいたような記憶はあるんだけど、果たしてそれが何人いたかっていう記憶は曖昧で。

「…まぁ、とにかく彼女たちがカナエについて何かの情報を持ってる…ってことなのね?」

「うん、多分」

「そう…まぁ、あの人が立ち去った今、どうこう言っても仕方ないわ。彼女が次にと言うなら、それを待つしかなさそうね」

垂の言う通り、今コモモさんはもうここにはいない。
次にコモモさんか…あるいは、他の誰かか…に、いつ会えるかはわからない。
でも、何故か。
それは、そんなに遠い未来の話じゃない。
そんな、気がした。


「カナエー!出口こっちにあったわよぅ!」

先に様子を見に行った風音が手を振って呼んでいる。

「うん、今行くー!」

わからないことだらけで不安なことも多いけど。
私が何者でも、私は私。
それだけは変わらない。
とにかく今は、できることをひとつずつしていこう。

出口に向かって歩きだし、あらためてそう誓った。


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