4 『カナエ?!ねぇ、どういうことなの?!』 戻ってきた垂は開口一番、そう叫んだ。 「ん、実はさ…」 さっき起こった出来事を垂に話すと、みるみるうちに垂はその表情を険しくする。 『何なの…逆恨みもいいところじゃない』 まったく、そうだと思う。 『ねぇ、炬。貴女なら何とかできるんじゃないの?』 「それがあかんねん。狭すぎて、炎技つこたらこっちまで巻き込まれてまう」 『そう…、』 目に見えて垂は落胆する、が。 『ねぇ、もう少し待っててくれる?私、外に誰かいないか見てくるわ』 そうだ…もし氷を割ることができるポケモンを連れたトレーナーが近くに居れば…! 「お願いね、垂」 「なるべく早く戻るわ」 今度はその姿を人へと変化させ、そして走り出す。 入口まで走る垂を見送り、ぺたりと地面に座り込む。 それにしても、あのロケット団員…! 今居ない相手に怒っても仕方ないのは分かってる。 それでも、 「あかん…なんや無性に腹立ってきたわ」 「奇遇ね、炬。アタシもよぅ」 ガッと炬は岩壁を殴り付け、風音も苛々と爪先を小刻みに動かす。 「…寒いわ」 ぽつり、と。 呟くように漏らしたなぎを見ると、小刻みに身体が震えている。 「確かに寒いね」 翡翠もそれに同調する。 それはもっともな話で、私たちがここに閉じ込められてから、もう小一時間くらい経った。 そろそろ、身体の芯から冷え始めている。 何とか…しなきゃ。 「ねぇ…なぎ、翡翠、風音。一度、ボールの中に戻って?」 今はこれくらいしか…みんなを守る方法を思い付かないから。 ボールの中にいれば、幾分かはマシだろう。 ――だけど、 「だけど、カナエちゃんは!」 翡翠の言う通り、私はボールに入ることはできない。 でも、 「大丈夫、炬がいるよ。ね?」 「せやな。ちっとは温いやろ」 炬はウインディの姿に戻る。 ふかふかと温かい体に触れると、少し安心した。 「それにほら、きっと垂もすぐに戻ってくるよ」 ね?と皆に問い掛ければ、まだ複雑そうな顔をしている。 『まぁ、ええやないのカナエ。みんなであたしにくっついとったら。皆でおる方が温いんとちゃうの?』 「そうよぅ、皆で居た方がいいに決まってるじゃない」 「風音の言う通りだよ。皆で居た方があったかいって!」 「私たちだって、カナエちゃんが心配なのよ?」 みんな…、 「ありがとう、みんな。でも、無理はしないでね?寒くなったら、すぐに戻るんだよ」 みんなの言葉に、目頭が熱くなる。 みんなが居てくれて、よかった。 「…あ、でも蒼衣は今弱ってるし戻った方がいいよね」 蒼衣を戻そうとボールを取り出す、が、蒼衣は小さく首を振る。 『僕も残る、』 「駄目。あんたは自分の心配してなさい」 『…でも、』 私と蒼衣の睨み合いがしばらく続き、そして。 「……あんたも、辛かったらすぐに言うのよ」 結局、私が折れる形になった。 蒼衣が一度決めたらなかなか折れないのは、出会ったときからだ。 そして私たちは、炬を囲むようにして垂を待つことにした。 |