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『カナエ?!ねぇ、どういうことなの?!』

戻ってきた垂は開口一番、そう叫んだ。

「ん、実はさ…」

さっき起こった出来事を垂に話すと、みるみるうちに垂はその表情を険しくする。

『何なの…逆恨みもいいところじゃない』

まったく、そうだと思う。

『ねぇ、炬。貴女なら何とかできるんじゃないの?』

「それがあかんねん。狭すぎて、炎技つこたらこっちまで巻き込まれてまう」

『そう…、』

目に見えて垂は落胆する、が。

『ねぇ、もう少し待っててくれる?私、外に誰かいないか見てくるわ』

そうだ…もし氷を割ることができるポケモンを連れたトレーナーが近くに居れば…!

「お願いね、垂」

「なるべく早く戻るわ」

今度はその姿を人へと変化させ、そして走り出す。
入口まで走る垂を見送り、ぺたりと地面に座り込む。

それにしても、あのロケット団員…!
今居ない相手に怒っても仕方ないのは分かってる。
それでも、

「あかん…なんや無性に腹立ってきたわ」

「奇遇ね、炬。アタシもよぅ」

ガッと炬は岩壁を殴り付け、風音も苛々と爪先を小刻みに動かす。

「…寒いわ」

ぽつり、と。
呟くように漏らしたなぎを見ると、小刻みに身体が震えている。

「確かに寒いね」

翡翠もそれに同調する。
それはもっともな話で、私たちがここに閉じ込められてから、もう小一時間くらい経った。
そろそろ、身体の芯から冷え始めている。
何とか…しなきゃ。

「ねぇ…なぎ、翡翠、風音。一度、ボールの中に戻って?」

今はこれくらいしか…みんなを守る方法を思い付かないから。
ボールの中にいれば、幾分かはマシだろう。

――だけど、

「だけど、カナエちゃんは!」

翡翠の言う通り、私はボールに入ることはできない。
でも、

「大丈夫、炬がいるよ。ね?」

「せやな。ちっとは温いやろ」

炬はウインディの姿に戻る。
ふかふかと温かい体に触れると、少し安心した。

「それにほら、きっと垂もすぐに戻ってくるよ」

ね?と皆に問い掛ければ、まだ複雑そうな顔をしている。

『まぁ、ええやないのカナエ。みんなであたしにくっついとったら。皆でおる方が温いんとちゃうの?』

「そうよぅ、皆で居た方がいいに決まってるじゃない」

「風音の言う通りだよ。皆で居た方があったかいって!」

「私たちだって、カナエちゃんが心配なのよ?」

みんな…、

「ありがとう、みんな。でも、無理はしないでね?寒くなったら、すぐに戻るんだよ」

みんなの言葉に、目頭が熱くなる。
みんなが居てくれて、よかった。

「…あ、でも蒼衣は今弱ってるし戻った方がいいよね」

蒼衣を戻そうとボールを取り出す、が、蒼衣は小さく首を振る。

『僕も残る、』

「駄目。あんたは自分の心配してなさい」

『…でも、』

私と蒼衣の睨み合いがしばらく続き、そして。

「……あんたも、辛かったらすぐに言うのよ」

結局、私が折れる形になった。
蒼衣が一度決めたらなかなか折れないのは、出会ったときからだ。

そして私たちは、炬を囲むようにして垂を待つことにした。


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