3 それは、この大変なときにできれば会いたくない人物。 「よォ、また会ったなぁ?」 「ロケット団…!」 チョウジの地下で、ラムダさんと会う直前に戦ったロケット団員が、あのにやにやとした笑みを浮かべて。 氷越しに、私たちを眺めていた。 隣には…あれは、何だろう? 夜色の体に、猫みたいな姿。宝石みたいな目が特徴的な、あまり馴染みのないポケモンが居る。 「お前にはいろいろ世話になったからなぁ。お前がキルリアを使うってことはもう知ってるから、このヤミラミを準備して待ってたんだが…まんまとかかってくれてよかったぜぇ」 男はにやにやと、一層笑みを深くする。 「どういう…?」 「お前がフスベに抜けるには絶対この道を通るからな。ヤミラミに悪の波動を使わせて待ち伏せしてたのさ」 「…っ!」 それはつまり、 「あんたのせいなの…?」 「そういうこったな」 男は、にやにやと笑みを崩さない。 「じゃあな、また縁があったら会おうぜぇ」 そう言って男は、ヤミラミと呼ばれたポケモンを連れて踵を返す。 「ちょっと自分!待ちぃや!」 「そうよ、こんなとに閉じ込めてどういうつもりよ?!」 炬と風音が口々に叫ぶ…が、男は笑みを浮かべたまま。 「これから一仕事あるからな。またチョウジでみたいにお前に邪魔されちゃたまんねぇんでな」 ま、運が良ければ誰か助けてくれんじゃねーの、と。 私たちの叫び虚しく、男は私たちの前から姿を消した。 「嘘でしょ…」 入口を塞ぐ大きな氷の塊。ちょっと押しても動きそうにない。 …そうだ、 「ねぇ、炬。炬の火炎放射で溶かせない?」 皆の視線が炬に集中する、が、 「溶かせる…とは思うけども、狭すぎるわ。氷で火が跳ね返って、危ないで。あたしはともかく、カナエらまで燃えんで」 それは、あまり嬉しくない返事だった。 「なぎ…、」 …も、駄目だ。 まだ凍傷が治ってない。 「大丈夫よ、私…!」 私の言いたいことを察したなぎが言う、が、 「駄目だよ、なぎ…なぎの手が、使い物にならなくなっちゃうよ」 ぎゅ、となぎの手を握りしめる。 ジョーイさんは言った。まだ完治しないうちから無茶をすると、なぎの手は使い物にならなくなる…と。 なぎが身を犠牲にしなくても、何かきっといい方法があるはず…! ね、と皆の方を見ると、少し複雑そうな表情だった。 |