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「うわぁ、」

中に足を踏み入れると、そこは幻想的というんだろうか…きらきらと氷に光が反射して、何とも言えない光景を描いている。

「本当、すごく綺麗」

まだ人の手付かずの美しい景色の残るこの場所に、垂は嬉しそうに目を細める。
こうしてまだまだ美しい場所が残るジョウト地方。
この光景が、ずっと残ればいい…ううん、むしろ私たちが守っていかなきゃいけないんだ。
あらためて、そう思う。

「あ、ウリムー」

もぞ、と岩の陰から現れたのは、茶色くて丸いウリムー。
家族なのか友達なのか、全部で5匹。
こちらの様子を伺っている。

「ふふ、かわいい」

『ニンゲン?』

『ニンゲンだよ?』

「ごめんね、ウリムーくんたち。ちょっと通りたいだけだから」

ぞろぞろと歩く見慣れない姿に興味を持ったんだろう、あひるのこどもよろしく私たちの後を着いてくる。

「カナエ、あの子ら着いてくるわよぅ」

後ろのちびっこ大行進が気になるのか、ちらちら振り返る風音。

「うーん…まぁ、いいんじゃないかな。飽きたらそのうちどっか行くよ、多分」

しばらくぞろぞろとウリムーたちを引き連れて歩いていたけど、やがて飽きたのかウリムーはいつの間にか姿を消した。
まぁいいか、と、私たちは引き続き出口を目指していた…のだけれど。



「っ?!」

それは、突然のことだった。

「…蒼衣?」

蒼衣が、突然その場に膝をついた。
顔色が悪い…し、呼吸も荒い。
どうして…?

「は…、カナエ…今、これ以上、進んじゃ…駄目、」

「……え?」

蒼衣の口から発されたのは、警句。
ううん、それよりも早く蒼衣を助けなきゃ、

「翡翠、蒼衣を運んでもらっていい?」

「ん、わかった」

ここは氷が多い…とりあえず、蒼衣を休ませるにも、氷の少ないところに移動させないと。
小柄な蒼衣の身体を、翡翠は軽々と抱き上げる。

「垂、蒼衣を休ませられるところを探してきてくれる?」

「わかったわ」

垂はその姿をパウワウへと変化させる。

「お願いね、垂」

ひとつ頷き、垂は奥の方へと姿を消した。
私たちはひとまず、近くの岩場のくぼみへ移動する。
衰弱しきった蒼衣は、その姿をキルリアへと変える。

『カナエ……、』

苦しそうな吐息と共に、蒼衣の声が聞こえる。

「蒼衣…あんまりしゃべらないで、じっとしてて」

しかし蒼衣は首を横に振り、なおも続ける。

『近くに…、何か居る…気をつけて、』

蒼衣の発した警句と同時に。

「っ!」

ドオォン…

私たちの居るくぼみの入口を。
大きな氷のかたまりが、塞いだ。

「ハッハァ!」

聞こえてきたのは、少し前に聞いたことのあるような気がする声だった。


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