4 「そしてもう一つ。君が連れているラルトスだ。昨日、突然人型をとった、といったね」 「はい」 「ポケモンは多くの種類がその成長とともに姿を変える。だけど、人型をとったという話は聞いたことが無いんだ。もちろん、ラルトスについてもね」 それは勿論、私も聞いたことがない。 しかし、今は元に戻っているが、間違いなく昨日は少年の姿をしていた。 それは、カイトさんにも確認を取ればわかるだろう。 「恐らく、君がこの世界にきて…それが多かれ少なかれ、影響を与えていると思うんだ。何か変わったことはあったかい?」 尋ねられて、昨日の記憶を手繰る。 草むらに放り出されて、突然蒼衣が現れて、街に連れて行ってもらって、そして… 「あ、」 「何かあった?」 「飴。飴をあげたんです。街に連れて行ってくれたお礼に」 それはまったくの気紛れだったけれど。 確かに、私は彼に飴をひとつ渡し、彼はそれを口にした。 「異界のものを口にしたものは異界に取り込まれる、ということだろうか…ふむ」 つまり、異界…即ち、私が元居た世界。 そこから持ち込んだものを口にした蒼衣は、何らかの突然変異として人型を取ってしまった…と、いうことだろうか。 「なるほどね、確かにその可能性は高い。さて、カナエちゃん。ここからが本題なのだけれど」 姿勢を正して、博士は言った。 「残念ながら、今の時点で僕に言えるのはこれくらいだ。そこで、どうだろう。この世界で、しばらく旅をして、冒険に出てみるというのは」 |