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「カナエちゃん」

ジムを出てすぐに、辺りに人がいないことを確認して、翡翠はその姿を人へと変化させた。
また、炬よりも少し大きくなった。

「まさか、アンタがそこで進化するとはねぇ」

しみじみと、風音は翡翠のその姿を見て言う。

「なんだよ、進化しちゃ駄目なのかよ」

「べっつにぃー?」

いつものように軽口をたたき合うふたり。
進化した翡翠は身長が伸びたのに加えて、やっぱり少し逞しくなった。
左側の髪が少し、伸びている。
そして、

「ぷ!しかもアンタ、その図体でピンクって!」

風音は指差して大笑いする。
そう。翡翠の着ているジャケットの裏地が、首周りの花びらを思わせるピンク色なのだ。
(別に似合ってるし、私はいいと思うんだけど)

「はいはい、ふたりとも喧嘩しない!ここジム前だからね!」

睨み合いを始めるふたりの間に割って入って、なんとか宥めすかす。

「そうだ、カナエちゃん」

ちょいちょい、と翡翠は私を手招きして呼ぶ。

「何、ひす…!」

ちゅ、と。
おでこに、何かが触れた。

「約束守ってくれて、ありがとう」

そう言って、ニッと笑う。

「ちょっと翡翠!アンタ何してんのよ!」

「風音には関係ないだろー」

「うっさいわね、ちょっとそこに直りなさいよ!」

「なんだよ、やんのかよ!」

「あぁら、アンタがアタシに勝てるわけぇ?」

「やってみなきゃわかんねーだろ!」

そして、言うが早いかふたりはメガニウムとピジョットに姿を変える。
うーん、風音はともかく、翡翠が少しばかり好戦的になった気がする。

平和だなぁ、なんて。
翡翠が触れたおでこに触れつつ、私はその様子をぼんやり眺めていた。


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