8 「ここまでにしよう」 ……… 「え?」 『は?』 私も翡翠も、頭に疑問符が浮かぶ。 「そんな不思議そうな顔をするでない。私の役目はそのトレーナーがバッジを持つに相応しいか見極めること。私が、君がこのバッジを持つに相応しいと判断した以上、これ以上続ける必要はない」 さっきまでの厳しかった表情とは打って変わり、ヤナギさんは穏やかな笑みを浮かべる。 「君達の絆は、確かに見せてもらった」 前にも、確かこんなことがあった気がする……そうだ、キキョウシティ。 マダツボミの塔で、私たちの絆が認められたとき。 あのときから変わらない…ううん、きっとそれ以上の、私たちの絆。 「ありがとうございます、ヤナギさん!」 なんだか予想外の展開になってしまったけれど、嬉しい予想外だ。 (翡翠は物足りないのか、複雑そうな顔をしてるけど) 「君達が旅の中で得られるものは、きっと何にも代えられないものだろう。大切に、しなさい」 「はい!ありがとうございました、ヤナギさん!では、」 「カナエ、少し待ちなさい」 そして一礼して帰ろうとする私を、ヤナギさんは呼び止めた。 「…さっき、彼女の名を知らぬと言ったが…すまない、あれは嘘だ」 「…!」 それは唐突な告白だったが、彼女が誰を指すのかは考えなくてもわかる。 「彼女の名は、確かに"サナエ"と言ったよ」 遠く懐かしむように。 そう、教えてくれた。 「あ…あの、今……今、その人はどこに、」 私の問いに、ヤナギさんは首を小さく振る。 「すまないが、それは本当にわからない…」 「そう、ですか…」 「だが…君が心から会いたいと願い、それに向かって行けば…いつかは会えるのではないかな」 落ち込む私の肩を、ヤナギさんは小さく叩いた。 私はただ、小さく頷くしか…できなかった。 |