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「もう何年前になるか…君によく似た目をした女の子に会ったことがあってな」

……!
まさか…まさか、それって…、

「あ…あの、ヤナギさん…その人の名前…サナエって、言いませんか?」

ヤナギさんは怪訝そうな顔をしたが、少し考えて

「さぁ…名前までは覚えとらんな、すまないが」

そう、答えた。

「そう…ですか、」

声に落胆の色が滲むのが、自分でもよくわかる。

「なんだ、知り合いだったのか?」

「いえ、わかりません…人違い、かもしれませんし」

そう。
まだ私はお母さんがいるという確証は掴んでないのだ。
まだ…お母さんだとは、言い切れない。
どこに行っても、確証が…掴めない。
まるでそれが、そういう「意思」のように…、

「…?まあいい、では続きを始めようか」

ヤナギさんはそう言って次のボールを構える。
…そうだ、今はジム戦の最中。集中、しなきゃ。

「ジュゴン、行け!」

ヤナギさんが次に出してきたのは、先程のパウワウの進化形…ジュゴン。

「なぎ、まだいける?」

『大丈夫よ、全然平気!』

振り返って、力強く頷いた。
なら、もう少しなぎにがんばってもらおう。

「ジュゴン、アクアジェット!」

ジュゴンはさっき水浸しになった床を逆に利用して、滑るように突っ込んでくる。
――速い!

「なぎ、」

私が反応するよりも早く。
ジュゴンは、頭からなぎにぶつかって、一瞬のことに反応できなかったなぎはその場に倒れ込む。

「ジュゴン、冷凍ビーム!」

それは、この状況を逆手に取られたのか。
ジュゴンが放った冷凍ビームは、なぎを狙ったものではなく、

「なぎ!」

彼女の、足元。
先程の戦いで水浸しになった足元に冷凍ビームを放った。
濡れていたこともあり、なぎの足はいとも簡単に氷漬けにされる。

『く…っ!冷たい…、』

なぎは必死で脱出を試みる、が、足はしっかりと凍らされ、脱出は容易ではない。

「ジュゴン、あられ」

『はいよ、ヤナギさん』

ヤナギさんの指示と同時に。
それは、どこから吹き付けてくるのか、小さな氷のかけらが舞い始めた。

『きゃ、』

ぴしぴしと小さな氷がなぎを襲う。
なぎはまだ、動けない。

「ジュゴン、吹雪」


そして、辺りは吹雪に包まれる。


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