3 「なぎ、電撃波!」 私の指示と同時に、渚楽は溜め込んだ電気を素早く放つ、が、 「ふん!パウワウ、氷のつぶて!」 特性に"静電気"をもつなぎ相手に接近戦は不利と判断したのか。 ヤナギさんは、遠距離攻撃の指示を出す。 「なぎ、炎のパンチで迎え撃って!」 「ほぅ…、」 パウワウが投げ付けた氷のかたまりを、なぎが手の先に生まれた熱で破壊すると、氷はあっという間に水になり、床一面を水浸しにする。 よしっ! 「なぎ、続けて放電!」 ばち、と火花が散り、そして。 『わぁあ?!』 パウワウは突然の衝撃に、驚きの悲鳴を上げる。 つまり、こういうことだ。 パウワウの放った氷を炎のパンチで溶かし、辺りに水を巻いた。 そこに放電を流すと、床の水を伝ってパウワウに電流が流れ込んだのだ。 床からの攻撃は予想外だったのか、びくん!と一度身体を震わせて、そして倒れ込んだ。 「ふぅ…む。なるほど、なかなかやるようだな」 目を回しているパウワウをボールに戻しながら、ヤナギさんは言う。 「ヤナギさん…あなたの言うところの"絆"が、何なのかは私にはわからない。でも、こうして戦いを通じて得るものも、それはきっとひとつの"絆"の形だと…そう、思うんです」 もちろん、戦いだけでなく。 日常での一挙一動から得られるすべてが。 私ときみたちを繋ぐもの。 言葉なんかじゃ言い表せない。 確かなカタチなんて存在しない。 でも、それは確かにここに"在"る。 すると、ヤナギさんは私の答えを聞くと、ふ、と小さく笑みを零した。 「最近の若い者にしては、マシなことを言う。悪くない」 そして、少し遠くを見つめ、続ける。 「最近の若いモンは、ポケモンを道具か何かと勘違いしている者も少なくない…私は、チョウジのジムリーダーとしてここからその様子を見るのが辛くてかなわん」 「ヤナギさん…ひとつ、いいですか?」 それはささいなことかもしれない。 ただの気まぐれと言われたら、それまでのこと。 でも、少し…気になったこと。 「聞こう」 ヤナギさんは頷き、続きを促す。 「どうして、私にその質問を?」 自分で言うのもなんだけど、私はヤナギさんから見れば十分に「最近の若い者」のはずなのに。 私の質問に、ヤナギさんは懐かしむように目を細めた。 |