3 「…ふーむ。つまり話を整理すると、君は元々日本の関東地方…東京に居た。 しかし、どういったわけか気付いたらこのニホンのジョウトに居た… そして、コガネシティの近くでこのラルトス…蒼衣君と言ったね。蒼衣君と出会った。 その後、コガネ警察のカイト君に出会い、カイト君が僕に連絡を取ってくれた。 そうして今日、君はヒビキ君に連れられてここに来た」 「そう、いうことだと思います」 流石、博士というだけあって頭の回転が早い。私の辿々しい説明でも、ちゃんと理解してくれた。 ふーむ、と唸る博士の前に、コトリ、とティーカップが差出された。 差出された手を辿っていくと、視線の先にはヒビキくんとあまり歳の変わらないであろう女の子が居た。 彼女はニコリと笑って、「どうぞー」と言って私の前にもカップを置いてくれた。 「やあ、コトネちゃん。ありがとう」 「どういたしましてー」 ニコニコと笑う彼女の名前はコトネちゃんというらしい。ウツギ博士やヒビキくんと違って、知らない顔だ。 「どうですか、博士。何か分かりそうですか?」 「いや、まだ肝心な部分が曖昧だからね…何とも言えない。しかし、ある仮説は立てられたよ」 驚いた。 私が一晩掛かっても何も分からなかったというのに、この一瞬で仮説を立てるだなんて。 「教えてください。どんな仮説ですか?」 「いや、本当に仮説だよ?それに、本質の部分ではない。まあ、そうだね。君には知る権利がある」 「お願いします」 気がつくと、コトネちゃんやヒビキくんもそれぞれテーブルの近くに腰掛けていた。 あ、コトネちゃんの抱いてるマリルかわいい。 よし、と言って、博士は話し始めた。 「まず、君が元々居た世界とこの今僕たちが居る世界。この世界は平行世界…つまり、パラレルワールドだ。そういう関係じゃないかと思うんだ」 パラレルワールド。よく小説などでは見かけるけれど。 博士は続ける。 「最初にピンと来たのは、君が元々居た世界も日本。ここもニホン。そして…ヒビキ君、ちょっと其処の地図を取ってくれないかい」 博士に指名されたヒビキくんは立ち上がり、後ろにあった地図を持って来て広げる。 「君が元々居た地方は関東地方、と言ったね」 「はい」 「この地図の右半分…この地方も、カントー地方と言う名前なんだ」 その符合に、鳥肌が立った。 そうだ、そういえばそうだった。 「都市の名前は違うみたいだけどね。カントーで一番大きい街…ここがヤマブキシティ。恐らく、君の居た東京はこのあたりに当てはまるんじゃないかな」 なるほど…そういえば、地図の形もなんとなく本州の関東地方から近畿地方辺りに似ている気がする。 「そして、今僕たちが居るのがこっちの左半分…ジョウト地方だ。君の居た世界に、これに該当する地方はあるかな?」 「ええ、多分。近畿地方、という地方に似ている、と思うんですけど」 「そうか…なら、やはりこの仮説は大方間違ってはいなさそうだ」 多分、私が最初に訪れたコガネシティは大阪あたりか。 「つまり、この2つの世界は平行関係にあるとする。それは決して交わらない。交わらないけれど、同じ時間軸を共有する。ここまではいいかい?」 私はこくりと頷いた。 「ところが、その平行関係に何らかの力が加わるか…あるいは逆に力が消えたか。どちらかはわからないけれど、とにかくその均衡が崩れた。その影響で、君はこの世界に引きずり込まれてしまった」 なぜ君が選ばれたのか、偶然か、それとも他に理由があるのか。それはわからないけれどね、と博士は付け加える。 |