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『楽勝!』

ひらひらと葉っぱを撒き散らして、翡翠は得意気に振り返った。
スキーヤーの女の子のウリムーは、目を回して倒れている。

「はわー、強いんですねぇ!おねーさんのベイリーフ!」

凍った床の上を、(文字通り)滑るように、彼女は近付いてくる。

「ううん、あなたもね!いい勝負をありがとう」

「どういたしましてー!そこのドアの向こうがヤナギさんの部屋ですよー」

「ありがとう、」

小さな氷のかけらを手の平で転がして遊んでいた風音に「いくよー」と声をかけて、私は扉を開く。
少し凍った扉はギ、と鈍い音を立ててゆっくり開いた。

「っ!」

さっきまでを「寒い」と形容するなら、この部屋は「冷たい」というのがしっくりくるんだろう。
肌を刺すような痛みに襲われる。

「よく来たな…私がチョウジのジムリーダー、ヤナギだ」

その声は、私たちの正面から聞こえてきた。
声のした方に顔を向けると、厳しい顔をしたおじいさん…この人がヤナギさんなんだろう…が、立っていた。

「あ…、はい。私は、」

「"絆"とは何か」

「え…?」

自己紹介もそこそこに(と、いうか私は名乗ってすらいない)、ヤナギさんはそう言った。

「君に問おう。"絆"とは、何か」

"それ"は、目には見えない不確かなもの。
"それ"は、人によって捉え方の違うもの。

「……わかりません」

いや、わかる。
わかるけど、どう言っていいかは…わからない。
とても、感覚的なもの。

「ふん…まぁ、いい。年寄りの戯言だ。ジムに挑戦に来たんだろう。なら、始めよう」

ヤナギさんは、そう言ってボールを構えた。
繰り出してきたのは、パウワウ。
ヤナギさんが何を伝えたいのかはわからない…わからないけど今は、

「お願いね、なぎ」

この勝負に、集中しなくちゃ。
かくて、ジム戦は始まった。


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