2 『楽勝!』 ひらひらと葉っぱを撒き散らして、翡翠は得意気に振り返った。 スキーヤーの女の子のウリムーは、目を回して倒れている。 「はわー、強いんですねぇ!おねーさんのベイリーフ!」 凍った床の上を、(文字通り)滑るように、彼女は近付いてくる。 「ううん、あなたもね!いい勝負をありがとう」 「どういたしましてー!そこのドアの向こうがヤナギさんの部屋ですよー」 「ありがとう、」 小さな氷のかけらを手の平で転がして遊んでいた風音に「いくよー」と声をかけて、私は扉を開く。 少し凍った扉はギ、と鈍い音を立ててゆっくり開いた。 「っ!」 さっきまでを「寒い」と形容するなら、この部屋は「冷たい」というのがしっくりくるんだろう。 肌を刺すような痛みに襲われる。 「よく来たな…私がチョウジのジムリーダー、ヤナギだ」 その声は、私たちの正面から聞こえてきた。 声のした方に顔を向けると、厳しい顔をしたおじいさん…この人がヤナギさんなんだろう…が、立っていた。 「あ…、はい。私は、」 「"絆"とは何か」 「え…?」 自己紹介もそこそこに(と、いうか私は名乗ってすらいない)、ヤナギさんはそう言った。 「君に問おう。"絆"とは、何か」 "それ"は、目には見えない不確かなもの。 "それ"は、人によって捉え方の違うもの。 「……わかりません」 いや、わかる。 わかるけど、どう言っていいかは…わからない。 とても、感覚的なもの。 「ふん…まぁ、いい。年寄りの戯言だ。ジムに挑戦に来たんだろう。なら、始めよう」 ヤナギさんは、そう言ってボールを構えた。 繰り出してきたのは、パウワウ。 ヤナギさんが何を伝えたいのかはわからない…わからないけど今は、 「お願いね、なぎ」 この勝負に、集中しなくちゃ。 かくて、ジム戦は始まった。 |