2 「ただいま」 「ただいま。あ、風音ちゃんお風呂あがったの?」 帰ってきたのは、買い出しに出ていた蒼衣となぎ。 手には少し大きく膨らんだ買い物袋がみっつ。 やっぱり俺が行けばよかったかな? そしたら、なぎはにっこり笑って言った。 「いいのよ、翡翠くん。私、お買い物好きだから」 …やっぱり俺、考えてること顔に出やすいのかなぁ? なぎにまで考えてることを読まれてしまった。 「だから言ったでしょう。わかりやすいって」 更に追い打ちをかける垂。 「そうだね、翡翠が一番わかりやすい」 そして、蒼衣。 もーやだこれ。なに、新手のイジメ?イジメなんですか。 そんなことを考えてたら、風音に「阿呆なこと言ってんじゃないわよぅ」と、トドメを刺された。ちくしょー。 「そんなことより、」 そんなことって何だ。俺のプライバシーはどうでもいいのかよ、って言おうとしたけどやめた。 「カナエと炬は?まだ帰ってないの?」 生乾きの髪を結わえながら、風音が言った。 その言葉に、ちらりと窓の外に目をやると、 「あ。カナエちゃん……と、あれ…?」 見慣れたその姿が、見えた。 (カナエちゃんは黒い服が多いから、夜はすごくわかりづらいんだけど) …じゃ、なくて。 カナエちゃんの隣を歩いてた、見慣れないヒト。 「なによぅ、カナエがどうかしたの?」 「や、カナエちゃんじゃなくてさ」 見慣れない、でも知ってる横顔。 あれは、 「みんなごめんね、遅くなって。ただいま」 そうこうしてるうちに、カナエちゃんたちは部屋の前まで帰ってきたみたいで、ガチャリとノブが回る。 部屋の入口。 カナエちゃんと、その後ろに立っているのは、 「……炬?」 見覚えのあるくせ毛に、黒めがちな大きな瞳。 そして、決定的なその訛りでこう言った。 「せやで」 ……誰か、嘘だと言ってくれ。 |