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「ただいま」

「ただいま。あ、風音ちゃんお風呂あがったの?」

帰ってきたのは、買い出しに出ていた蒼衣となぎ。
手には少し大きく膨らんだ買い物袋がみっつ。
やっぱり俺が行けばよかったかな?
そしたら、なぎはにっこり笑って言った。

「いいのよ、翡翠くん。私、お買い物好きだから」

…やっぱり俺、考えてること顔に出やすいのかなぁ?
なぎにまで考えてることを読まれてしまった。

「だから言ったでしょう。わかりやすいって」

更に追い打ちをかける垂。

「そうだね、翡翠が一番わかりやすい」

そして、蒼衣。
もーやだこれ。なに、新手のイジメ?イジメなんですか。
そんなことを考えてたら、風音に「阿呆なこと言ってんじゃないわよぅ」と、トドメを刺された。ちくしょー。

「そんなことより、」

そんなことって何だ。俺のプライバシーはどうでもいいのかよ、って言おうとしたけどやめた。

「カナエと炬は?まだ帰ってないの?」

生乾きの髪を結わえながら、風音が言った。
その言葉に、ちらりと窓の外に目をやると、

「あ。カナエちゃん……と、あれ…?」

見慣れたその姿が、見えた。
(カナエちゃんは黒い服が多いから、夜はすごくわかりづらいんだけど)
…じゃ、なくて。
カナエちゃんの隣を歩いてた、見慣れないヒト。

「なによぅ、カナエがどうかしたの?」

「や、カナエちゃんじゃなくてさ」

見慣れない、でも知ってる横顔。
あれは、

「みんなごめんね、遅くなって。ただいま」

そうこうしてるうちに、カナエちゃんたちは部屋の前まで帰ってきたみたいで、ガチャリとノブが回る。
部屋の入口。
カナエちゃんと、その後ろに立っているのは、

「……炬?」

見覚えのあるくせ毛に、黒めがちな大きな瞳。
そして、決定的なその訛りでこう言った。

「せやで」

……誰か、嘘だと言ってくれ。


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