2 それは初めての体験で、飛行機すら碌に乗ったことも無い私にとっては空の上というのは本当に未知の世界なのだ。 と、いうことをヒビキくんに言ったら「飛行機?何それ」と返されてしまった。どうやら、飛行機というものは存在しないようだ。 機械の力で空を飛ぶんだよ、と簡単に説明すると「俺も乗ってみたいなぁ…でも俺にはこいつがいるから、とりあえずはいいかな」と、ピジョットの背中を撫でながら言った。 その表情は、すごく優しい顔だった。 そうだね、こうやって力を借りて助け合って生活できるなんて素敵だと思う。 蒼衣はといえば、落ちないようにしっかり私に捕まりながらも、下を見下ろして景色を楽しんでいるようだ。 そうこうしているうちに、「もうそろそろ着くよ」とヒビキくんが言い、程なくしてピジョットは高度を落とし、ふわりと地上に降り立った。 「ありがとう、ピジョット。戻っていいぞ!」 「ありがとうね、ヒビキくんに、ピジョット」 ピジョ!と一鳴きし、ピジョットはヒビキくんがかざしたボールの中に吸い込まれていく。 「ウツギ博士の研究所はこっちだよ!」 カチ、とボールを再びベルトにセットして、ヒビキくんは言った。 それはこののどかな街のなかで、異なった雰囲気の建物だった。 民家の中に佇む大きな建物。 「わぁ…ここ、なんだ」 「さ、入った入った!」 私の背中を押すようにして、ヒビキくんは言った。 研究所のドアが開く。 中に居るのは研究員らしき、眼鏡に白衣の男の人。 「はかせー!連れてきたよー!」 そう言ってヒビキくんは、その研究所の一番奥に居た男性に手を振る。 何やら資料を読んでいたらしい、博士と呼ばれたその人物は顔を上げ、私とヒビキくんを交互に見比べ、 「やあ、話は聞いているよ。カナエちゃんだね」 「あ、はい…」 「はは、そんなに緊張しなくていいよ。僕はこのワカバの研究所でポケモンの進化について研究しているウツギ。立ち話も何だし、まあそこに座りなよ」 博士に促されるまま私は指された椅子に座り、そしてぽつりぽつりと昨日私の身に起こった出来事を話し始めた。 |