8 「炬、どうしたの?」 その夜。 私は、チョウジの外れにある広場にいた。 隣には、炬。 タンバでの夜を思い出す。 あれから、アテナさんのアーボックをなぎが破って、アテナさんは一度退いた。 「アナタとは、また会う気がするわ」 という言葉を残して。 そして私は先に進んでいたワタルさんと合流して、おかしな装置を破壊した。 少なくとも、当面はこれで大丈夫だと。 ワタルさんは、一度リーグに戻った。 曰く、 「少し長く出過ぎた」 らしい。 まあ、仮にもリーグチャンピオンなんだし、多忙なのかもしれない。そのあたりはよく知らないけど。 そして、私はみんなの治療のため、ポケモンセンターに戻り…さっき、治療を終えたばかりの炬に連れられて、ここにいる。 『うん、まぁ、ここらでええかな』 とす、とあまり草の深くないところにしゃがみ込む。 私もその隣に腰を下ろすと、炬はどうしたものかとしばらく眉を寄せ、そして。 『…なぁ、カナエ。前に、そのときが来たら進化さしてほしいって言うたやろ』 それは、少し前のタンバでの出来事。 「うん、言ったね」 もちろん、覚えている。 『あれな。あたし、今がそのときやと思うねん』 炬は言う。 『今日、ボールの中でずっと考えとった。負けはせんかったけど、自分が有利な相手にすらあの様で、このままやったらいつかみんなの足を引っ張るって』 だから、と。 『みんなを助けられるだけの、カナエの力になるための、力が欲しいんよ』 私は、 「そういうことだったら、私は…炬が進化するのはむしろ賛成だよ」 多分、こうなると何となく予想していたから。 ここにくる前に、炎の石をポケットに忍ばせておいた。 不思議な赤い輝きを放ち、ほんのり温かい石。 「じゃあ、炬。いくよ?」 炬が頷いたのを確認して、そっと石を宛がう。 と、 「わ、」 まばゆい光に包まれたシルエットは、次第に大きくなっていく。 そして、 『なんや…カナエがちっちゃあ見えるなぁ』 「炬が大きくなったんだよ」 おめでとう、と。 もふもふした炬の体に抱き着いた。 「あったかいねぇ」 『暑いの間違いとちゃうの、こんな夏の日に』 「ううん、あったかいんだよ。炬がここにいてくれるっていう証でしょ」 『やめぇや、むずかゆい』 そう言って炬は首を振ると、その姿を人型に変えた。 その姿は、すらりと長身。170センチは越えてるだろうか、スポーツ選手のように引き締まっている。身長は翡翠より高い、かな?くせのある赤い髪はポニーテール。 白のハーフパンツは黒のミニスカート。 「かっこよくなったねぇ」 「ほうか?」 「うん、頼もしくなった。…さ、帰ろうか!」 「んー」 ゆるりと立ち上がって、私たちはチョウジのポケモンセンターへ歩き出した。 部屋に帰ったら翡翠が「あー、また勝てなくなった」と嘆いていたのは、また別のお話。 |